何やってんだろう、そんな気持ちでいっぱいだ。こんな気持ちになるのは初めてじゃない。
最近じゃ学園の授業よりも塾の勉強を優先しているような気がしてならない。そんなつもりは無かったけど、実際そうなってるんだから言い訳は出来なくて悲しくなる。聞こえてくる授業内容はもう、あれから頭には入ってこなくなってる。違う、聞いても勉強しても分からなくなってきてる。もういっぱいいっぱい。
「お。何してんの?」
噴水の前。何と無く癒されるような気がしてここに来てはみたけど、どこにいても考えることは一緒だった。隣に奥村くんが座る。何か最近こういうの多いなぁと思いながら、やっぱり特に会話のない微妙な空気が流れる。
彼のことは別に嫌いじゃないけど、あんまり話したことないから何とも言えない。いい人だとは思う。明るいし。
「そーいやこの間のテストどうだった?」
ああ、そこは、触れられたくなかったなぁ、なんて。全然駄目だったよ、ってそう伝えると彼は笑って俺もだと言った。
「塾の勉強もさ、毎日雪男に教えてもらってんのにサッパリだし」
「あ…一緒に住んでるんだっけ」
「住んでるっつーか…まぁ、そうなんだけど」
ああそうだっけ、二人は兄弟なんだ。まるで正反対な二人を見ていると、兄弟なんてことは全然思わないまま忘れてた。双子。奥村先生は本当に優秀だと思う。奥村くんは確かに、勉強は苦手だと思う。私が言うのもなんだけど。
不思議だった。成績が悪くて皆に馬鹿にされても、こうやって「仕方ない」と笑っていられる奥村くんが。「俺バカだから」と恥ずかしげもなく言える奥村くんが。その表情は何だか清々しくて、私の気持ちがモヤモヤする。
「……気にならないの?」
「…は?何が?」
「成績とか、周りの目とか…双子なのに、とか……よくわかんないけど」
「別に気になんねぇよ。雪男は俺にとっちゃ自慢の弟だからさ、アイツがスゲェのは昔から知ってるし」
その表情が余りにもキラキラしていて、現実を突き付けられたような気がして胸がギュッとなる。きっと私は彼のように素直に誰かを「凄い」とは言えないだろう。妬ましくて、羨ましくて、どうせ私なんか…と、誰にぶつけていいのか解らない気持ちになるのだ。人に見せられるものじゃない。それはただの醜い嫉妬。
「それに俺は祓魔師になるのが一番だからさ、学校の成績なんてどうでもいいんだよ」
…――そう、呟いた彼。
会話は終わる。私も、彼も何も言わない。よく分からない気持ちのまま、私たちはしばらくここで無言の時間を過ごすことになる。
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