訓練生だった私が候補生になったのはつい先日のこと。実感は、正直言えばそんなの全くない。まだなったばっかりだからっていうのもあるかもしれないけど、今までと特に変わったこともしてないし、なんならあの忙しかった合宿が終わってちょっと落ち着いたような気さえする。



「随分サボっていたようだな」



随分と冷たい声色で渡されたのは、昨日学園の方で受けたテスト。事前に言われていたはずなんだけどすっかり忘れてた。そんな私の頭に“テスト勉強”なんてそんな言葉は浮かぶはずもなく、散々な結果。合宿が終わってスグに自室のベッドで今までないくらい深い眠りについていた。その結果がこれだ。もう終わったな―――と、頭にはそんな言葉が浮かぶ。
勉強してなかったけどさ、と、そんな言い訳にならない言い訳はどんどん自分を追い込んでいく。少し勉強してなかっただけでこれだ。クラスから完全においてけぼりを食らっている。無性に悲しくなった。

一番後ろで聞いている授業の内容も、まるでわからない。合宿中も学園の授業は勿論あって、少し、油断していたのかもしれない。塾の方に気を取られ過ぎていたのかもしれない。ノートは取ってあるけど、内容は全く覚えていない。



「あ、むむむ、ちょっと、」



廊下、後ろから私を呼ぶ声がする。振り返ると奥村くんがいて、手には何かを持っている。合宿で使っていた旧男子寮に忘れ物をしていたらしく、彼が私に差し出してくれた。それはただの赤ペンだったけど。
ありがとう、それだけ言って私はまた歩き出す。



「……今から塾だろ?一緒に行こうぜ」



再び駆け寄ってきた彼に、小さく頷いて一緒に歩き出す。
塾と学園の両立がこんなに難しいとは思わなかった。学園の勉強だけでも最初からついていけてなかったのに、やっぱり無理だったんだ私には。訓練生とか候補生とか、問題はきっとそんなところじゃない。何だか少し疲れた気がする。小さなため息を着いて、候補生になって最初の授業を受けた。


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