電気が消えた部屋。言い合いをしていた声も止み、一瞬空気が止まったようなそんな気がした。
「ぎゃああ!!」
「あだっ…ちょ…どこ…」
「何だッ!?」
「…え……ッわ、」
暗闇の中はパニックだった。私の左腕を掴んだのは多分、杜山さん。ううう…なんて今にも泣きそうな声と、突然ガシッと掴まれた驚きで脚の上の囀石がゴロッと落ちで、おまけに痺れた足はもつれてさらに隣の(たぶん)勝呂くんの腕にしがみつく。咄嗟の判断、咄嗟の出来事で隣の彼からも「うおっ」なんて声が聞こえた。
暗闇に明かりが点いたのはその直後。機転を利かせた志摩くんが携帯を開いたようだった。
「あ…ご、ごめん……」
「え?…い、いや、ええけど…」
パッと勝呂くんの腕を離して、気まずくなって何と無く謝ってしまう。杜山さんも「ご、ごめんね、」なんて本当に申し訳無さそうに謝ってくれた。ううん、としか言えなくて私もポケットから携帯を取り出した。皆が携帯を開くと暗い部屋もだいぶ明るくなる。
「あ…あの先生電気まで消していきはったんか!?」
「まさかそんな…」
「停電…!?」
「いや窓の外は明かりがついてる」
「どういうこと?」
「停電はこの建物だけってことか…?」
皆が冷静に状況を把握していく。彼らの会話で私も理解できた。
志摩くんが廊下を見てくると言って立ち上がり、そんな彼に気を付けてと三輪くんが声を掛けた。
「俺こういうハプニングワクワクする性質なんやよ。リアル肝だめし………」
ギィ…と開けられた扉の向こうも闇。だけど確かに見えた、それ。一瞬その場の空気が止まり、志摩くんはまるで何事もなかったかのように表情を変えずにパタンと扉を閉めた。
「…なんやろ目ェ悪なったかな…」
「現実や現実!!!!」
志摩くんにツッコミを入れる勝呂くん。やっぱり見ていなかった事にしようとしてたらしい。
思わず気の抜けたような空気になったその瞬間、バギァッという音がして扉が破られた。避けるように飛んだ志摩くんが床に倒れる。
「昨日の屍…!!」
「ヒィィ…!魔除け張ったんやなかったん…!?」
皆の声が上擦り、私も心臓が速くなっていた。息を呑み、落ち着こうと今度は大きく息を吸う。すると屍は“ブチブチプチプチ”とツギハギだらけのコブを少しずつ膨らませていく。ただ見守っていると、その瞬間にそれは勢いよく破裂した。
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