空いてる部屋に移動し、正座した脚の上に囀石――バリヨン――という石を乗せられている。時間が経つほど重くなるというこの石は抱えるほど大きい。まだ治ったばかりだからって私は皆より一回りくらい小さな石だけど、それでも足は痺れてくる。なんか、もう治ってるのに申し訳無いけど。



「皆さん少しは反省しましたか」

「な…なんで俺らまで……」

「連帯責任ってやつです。この合宿の目的は“学力強化”ともう一つ“塾生同士の交友を深める”っていうのもあるんですよ」



ハァ、と深い溜め息をついた奥村雪男。呆れたように私たちを見ている。今はさっきの喧嘩騒動の罰を受けている真っ最中なのだ。



「こんな奴らと馴れ合いなんてゴメンよ…!」

「コイツ…!」

「馴れ合ってもらわなければ困る。祓魔師は一人では闘えない!お互いの特性を活かし欠点は補い、二人以上の班で闘うのが基本です。実戦になれば戦闘中の仲間割れはこんな罰とは比べ物にならない連帯責任を負わされることになる」



そこをよく考えてください――諭すようにそう言った彼の言葉だった。こんな奴らと馴れ合いたくない、そう言ったのは神木さんで、彼女はぐっと唇を噛み締めて眉間にシワを寄せている。
今日の奥村雪男はいつもより数段と先生らしい。普段が先生らしくないわけじゃなくて、なんていうか、いつもよりそんな感じ。普段から先生らしいんだけど……ってそんな事はどうだっていいんだけど。こんなこと考えてる間にも脚に乗ってる囀石はどんどん重くなってくる。あ、脚が痺れてきたような気がする…。



「…では僕は今から三時間ほど小さな任務で外します」



奥村雪男はそう言ってニッコリ、部屋を出ていった。昨日の屍の事もあるから、と寮のすべてに施錠をしてくれたらしい。それに魔除けも。そのせいで私たちは彼が戻ってくるまで三時間、外には出なくていいと言った。罰なんだから仕方ないのかもしれないけど。正直、勝呂くんと神木さん以外はあんまり関係ないんだけど。
そんなことしてる間にも、勝呂くんと神木さんはまた言い合いを始める。間に挟まれている奥村くんが可哀想だと思う。代わりたくはない、けど。



「…ほんま性格悪い女やな」

「フン、そんなの自覚済よ、それが何!?」

「そんなんやと周りの人間逃げてくえ」



…――なんだかわかんないけど。まるで私に言われてるようなそんな気がした。性格が悪いのは神木さんだけじゃない、私だって、そうだ。神木さんがお風呂で杜山さんのこと言ってる時も、皆が頑張ってるときも、私はいつも見て見ぬふり。私は関係ないっていっつもそう。…今だってそう思ってた。私は関係ない、巻き込まれただけだって。



「むーさん、大丈夫?」

「…え?……大丈夫だけど」

「そう?何だか顔色がよくないし、やっぱりまだ昨日のが治ってないのかなって…」

「そんなことないよ……ありがとう」



隣にいる杜山さんが心配するように私の顔を覗き込んだ。キラキラした瞳が眩しい。杜山さんの優しさが今は何だか素直に受け取れないでいる。今までずっと考えないようにしてた、だけど本当はわかってる。きっと羨ましいんだ、杜山さんが。妬いてるんだ、きっと。
私に友達が出来ないのは、私がこんな性格をしているからなのだろうか。そっと洩らした溜め息は、突然暗くなったこの部屋に吸い込まれていく。


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