忍術学園。
ここは、将来忍者になりたい子供たちが忍術を学ぶために通う学校。
そんなところに事務員として就職したのが今からもう3ヶ月ほど前のこと。



「お疲れさまです」

「あ、お疲れ様です」



やるべき仕事を一通り終え、ほんの少しの休憩中に話しかけてくれるのは土井先生。
大変ですね、とわざわざお茶を持ってきてくれる土井先生は、事務員ではなくその名の通り教師。
本来ならお茶汲みは私の仕事で、それを教師にやらせている私は一体何様なんだろう。
スミマセン、そう謝ると土井先生はいつものように気にしないでくださいと笑うのだ。



「今日は小松田くんは?」

「校庭の掃除をしてくるって言ってたので、外にいると思いますよ。何か用があるならお伝えしておきましょうか?」

「あぁいや、そんなつもりじゃなくて…」



柔らかい笑顔を浮かべた土井先生は「今日はやけに静かだったから」と言葉を続ける。
ああ、言われてみればそうかもしれない。
小松田さんはいつも本棚やらお茶やらをひっくりかえして、その片付けを手伝ってくれているのはだいたいいつも土井先生。
今日は小松田さんがここにいないからそんな騒動もなく、穏やかな時間が流れている。



「いつもすみません」

「むむむさんが謝ることじゃありませんよ、むしろ我々が謝らなければいけないくらいです。小松田くんがこんなにドジだとは思わなかったでしょう」

「…――確かに予想以上でしたけど、やりがいはありますよ。達成感とか」



午前中に小松田さんがやったであろう間違いだらけの帳簿、ほぼ訂正し終えたそれをペラッと見せると土井先生は一瞬目を見開いて、そして苦笑いを浮かべた。
小松田さんが書いた文字はほぼ間違いで、合ってるものを探す方が大変かもしれない。



「お時間大丈夫ですか?」

「え?あ…ああもうそろそろ行かないと次の授業が…!」



お疲れさまです、二度目のその言葉を投げ掛けてくれた土井先生は次の授業の為に慌てて事務室を出ていった。



土井先生と。


今度は私が土井先生に、お茶とお茶菓子を持っていこう。


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