意識は朦朧として、そこを維持したまま途切れることはなかった。だからちゃんと知ってる。私を運んでくれたのが奥村雪男だった事も、皆に、その……下着姿、を、見られたってことも。私が脱いだシャツを掛けてはくれたけどきっと、彼だけじゃなくて皆に見られた。恥ずかしい。こんなことなら意識無くなった方が良かったなぁ…なんて不謹慎なこと思いながら、奥村雪男が掛けてくれたであろう布団を引っ張って口許を隠した。不思議と今は意識がはっきりしてる。だから余計に恥ずかしい。オデコに貼られた冷えぴたはもう全然冷たくもなんともない。…熱のせいかもしれないけど。



「むむむさんは屍の魔障を大量に浴びたわけではないので、少し休めば良くなります」



私の腕に注射をした彼はそう言って微笑んだ。彼の手はひんやりしていて気持ちよかったけど、腕を布団に引っ込める。私を着替えさせてくれたのは神木さんで、あとでお礼言わなきゃなって思った。お腹空いたなぁとか、考えることは支離滅裂であっちこっちを行ったり来たり。



「…せっかく参加してくれたのに申し訳ない事をしてしまったね」

「……や、別に…貴方にやられたわけじゃ…ない、です」



しどろもどろ。改めて二人になると、どうやって話していいのかわからない。学校では同級生で、塾では先生で。立ってる場所は比べちゃいけないくらい違う。同い年で、だけど私なんかとはまるで違う彼に接する、態度がわからなかった。
貴方、と呼んでしまったけど。彼は奥村くんであり、奥村さんであり、奥村先生でもある。難しいところだと思う。“くん”と呼ぶには彼は遠いし、“さん”と呼ぶには何だか他人行儀な気がするしだからと言って“先生”と呼ぶには抵抗がある。どこにも当てはまらないくらいの微妙な場所にいるから、なんか、よくわかんない。そういえば私奥村燐のことは何て呼んでるんだっけ。奥村“くん”?……うん、なんかもうどうでもいいや。



「…後で夕飯持ってくるよ」



思考を放棄した私にそう言った彼の表情から考えてることは全く読み取れなかった。もしかしたら呆れてるのかもしれない。もしかしたら合宿に呼ぶんじゃなかったなんて思われてるかも知れない。それも別に構わないけど、ほんのちょっと、胸がきゅっとなった。


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