学園の噴水。そこは学生の溜まり場になりつつある。夏のこの暑さからするとかなり涼しげでなんだか気持ちいい気がするし私も今そこに向かってる。用はないけど。
目に入るだけで癒される気がするこれはマイナスイオンとかいうやつだろうか。近付いていくとそこには数人の生徒がいて談笑中らしい。笑い声を通りすぎて反対側にいくと、奥村燐が今にも死にそうな顔でボーッとしていた。そしてその頭には。ぐるぐる、指を回してみると彼の目には生気が甦り不思議そうに私の指先を目で追う。ぐるぐる、ぐるぐる。



「…何してんだ?」

「トンボってさ、こうすると捕まえられるんじゃなかったっけ」

「トンボ?」

「………あ、」



飛んでっちゃった。頭に伸ばした彼の手に反応してトンボはふよふよと飛んでいく。
彼の隣に座ると、何故だか盛大な溜め息を吐かれてちょっと怯む。え、そんなに嫌だったのかな…なんて、そうではないみたいだ。



「何でこの世にはテストなんてもんが存在するんだ……」

「………補習組?」

「…むむむは違ぇのか?」

「そこまで悪くないよ」

「うっわ…俺てっきりお前も補習組だとばっかり…!」



頑張りすぎることを止めてから早数ヶ月。確かに落ちこぼれ組ではあるけど、赤点とかそれはさすがに嫌だからテスト勉強は一応してる。決して良くはないけど、そこまで悪くもない点数。彼は私を仲間だと信じていたらしく、頭をかいて絶望にうちひしがれている。(何だかとても申し訳ない、が、私が悪いわけではない)
うわぁもう最悪勉強教えてくれよ!なんて、彼は頭のいい弟がいるにも関わらず何故か私に勉強を教えてと過去何度か言ってきた事がある。彼いわく、頭が良い人に教えてもらっても余計に解らなくなるだけ、らしい。だから私。やっぱり彼の中では私は同類らしい。別に構わないけど。
あああどうしよう俺の夏休みが…!と、こっちまで気分が滅入ってきそうな声。だけど私も数学はギリギリだった。赤点ではなかったけど………と。そんなことを考えていると目の前を通りすぎたそれが彼の頭に留まる。



「…なんだよそんなじっと見て。ばかにしてんのかっ…!」

「違うよ、蝶々だよ」

「蝶…?」



また手で触ろうとするもんだから案の定、蝶々はふよふよと飛んでいってしまった。



「人気者だね」

「虫ばっかりかよ…」



はぁ、と溜め息を吐いた彼の哀愁漂う姿に笑ってしまう。彼は不機嫌そうに肩から軽く体当たり。八つ当たりだ、と言えばウルセーと返ってきた。平和すぎて、また笑えた。



頭に止まった虫



「女子にモテてぇ…」

「弟くんはモテモテなのにね」










―――――
連載のちょっと未来。
彼は漫画の主人公にもかかわらず本編でほぼ彼女と関わりがないのでこちらで。


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