朴さんは祓魔塾を辞めると言ってた。私もそうできればどれだけ気持ちが楽になるだろう。言えない理由なんてないのに、どうしてだか辞める勇気は沸いてこないのだ。



「…――それと真剣な人をバカにしたりするのも私は好きじゃない」



逸れていた思考が戻ったとき、耳に入ってきた言葉は朴さんのそれだった。朴さんは凄いな…ってそれが私の感想。普通言えないよ、友達にそんなこと。彼女の言う通りそれじゃあ本当の友達なんかじゃないかもしれないけど、私の周りにいたのはそんな関係の子たちばっかりだった。友達がいない今じゃなくて、中学生の頃の話だけど。
そんな事を考えていると何故だか空気に一瞬の間があく。どうしたんだろうと横目で見ると、二人は天井を見上げて大きな悲鳴を上げていた。私も目を見開いて一瞬、呼吸を忘れる感覚に陥った。ポタ、ポタ…と落ちてきた、熱いのか冷たいのかよくわからない液体が頬、肩、腕と順番に落ちてくる。



「朴!!…むむむさん!!」



神木さんの声がぼんやり聞こえる。身体に力が入らない。見えたそれは前にネイガウス先生の授業で一度見たことある気がするそれだった。目の前で朴さんが倒れている。彼女に跨がるように天井から降りてきたそれの液体が朴さんに降り注いでいる。なんなのどうなってるの、そんな事を思いながら力が抜けていく身体をロッカーに預けた。



「紙を破け!」



聞こえてきた声は男性特有の低い声。フワフワする意識の中で目に入ってきたのは奥村燐だった。ここ女風呂じゃなかったっけ…なんて変に冷静な思考が私の頭を占領している。身体が、頬が、肩が、腕が、焼けるように熱い。
次に聞こえたのは可愛らしい声で、それは杜山さんのものだった。フワフワする意識に白い“もや”がかかる。うっすら開いていた瞼を閉じる。この方が楽だ。腕や肩はまるで熱湯をかけられたかのように熱く、どんどん痛みを帯び自然と呼吸も荒くなる。色んな声と色んな音がする。戦ってるのかなぁなんて呑気に考えられる自分には何だか呆れてくるけど。



「…むむむさん、大丈夫?今、手当てするからね…っ!」



杜山さんが私の腕に“サンチョさん”を充てがってくれる。ひんやりして気持ちがいい。うっすら目を見開いて杜山さんを見ると、眉間にシワを寄せ眉を八の字にして必死で私の手当てをしてくれている。



「ご、ごめんね痛かった…!?」



そんな彼女に首を横に振り、ありがとうって呟いた。大きな目を更に見開き顔を真っ赤にした彼女はコクコクと頷き、次にくしゃっとした笑顔を見せてくれた。


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