杜山さんが神木さんたちと一緒にいるのをよく見かけるようになった近頃。とはいっても神木さんと朴さんの後ろをピョコピョコと着いていってるだけのようにも見えるけど、それでも杜山さんはいつも嬉しそうにニコニコ笑っていた。そんな姿が印象的な彼女の話はここではなんの関係もない。いよいよ今日から合宿が始まるのだ。
数日分の荷物は昨日寝る前に準備した。鞄に詰められた荷物は少ない。集合場所は正十字学園の昔の男子寮だと聞いた。鞄を肩にかけると溜め息が出る。本音で言えば、奥村雪男に言われて頷いてしまったあの瞬間に戻って参加はしませんと言い直してやりたい。あの後何度後悔したことか。あの時彼が言った「嬉しい」の言葉の意味もよくわからない。彼の空気に流されてしまった。また溜め息が漏れる。



「おはようございます」

「…お早う御座います」



やけに古びた男子寮の校門前には奥村雪男と奥村燐がいた。ふわりと微笑んだ眼鏡の彼に挨拶を返す。周りには誰もいないらしく、見渡していた私にぶっきらぼうな言葉を投げ掛けてきた彼はゆっくりと立ち上がる。



「むむむが最後だぜ…っと、さぁ行くか!」

「…え、あの……?」

「部屋わかんねーだろ?案内すっから着いてこいよ」



ふぁ、と一度大きな欠伸をした彼の後ろを小走りで着いていく。奥村雪男はそんな私を見て小さく笑ったように見えたが一瞬だったからそれもどうだか分からない。隣に並ぶと彼はまた大きな欠伸をする。外も汚かったが内装も相応に汚いらしい。案内された部屋も部屋で、別に構わないんだけど少し埃臭かった。荷物を置くいて一息ついていると、後ろにはまだ彼が居るらしい。振り向くとドアに背を持たれて私を待っているようだった。まだ何かあるのかと少し首をかしげれば他の場所を案内してくれるらしい。確かに数日間過ごすんだったら知っておいた方がいいかも知れないと思ってまた彼の隣に並んだ。



「洗面所はそこ。それから飯は食堂で全員揃ってから食うんだってよ」



歩きながらお風呂やトイレの場所も教えてもらう。流石は正十字学園、汚くても古くてもやっぱり広い。彼、奥村燐は何故かやけに詳しいようで迷うことなく案内してくれる。



「詳しいんだね」

「あ?…あぁ、まぁ俺と雪男はここに住んでるからな」



え、と言葉が無くなった私を見た彼は何が可笑しかったのか突然口元を歪めて笑った。てっきり彼らも新設された寮に住んでいるのだと思っていた、…わけでは無いけれど何だか虚を突かれた感じ。彼らがどこに住んでいようが関係はないけど。考えたこともなかったし。
一通り案内をしてもらって一旦は部屋に戻った。合宿最初の勉強は今から2時間後。それまで何して過ごそうか、なんて考えながら真っ白で思ったよりもフカフカのベッドに身体を預けた。


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