勉強はいつの間にかついていけなくなって、もういいやって気づけば落ちこぼれ組。頑張るのをやめた。成績は落ちていくけど、気持ちは随分と楽になった。それに私よりも成績の悪い人は意外とたくさんいて、それもまた何だか少し私を安心させた。成績なんかどうでもいい、そう思うのに自分より下が居ることに酷く安心感を覚える自分には何とも言えない気持ちになったけど。



「あー疲れた…もうサッパリだ、俺無理だ次のテストやべぇ…」



午前の授業を終え、いつの間にか一緒にご飯を食べるようになった彼――奥村燐の言葉を聞きながら膝の上にお弁当箱を広げた。
キッカケは何だったか思い出せないけれど、最近はこうやって彼と共にお昼を過ごす日数が増えてきた。彼も学園では落ちこぼれの分類で、同類である彼と過ごす時間は落ちついていて意外と嫌いじゃない。悪魔払いに関しては私なんか足元にも及ばないけど。っていうか彼は悪魔なんだけど。



「はぁ…つーかいつも思ってたんだけどよ、お前それで足りんのか?」

「…微妙、かな。でも貧乏学生だからこれが精一杯だよ」

「ふーん……ま、俺も同じく貧乏だけどよ。小遣いなんて1ヶ月2千円だぜ!?」



ぶつぶつ文句を言いながらお弁当をつつく。(2千円はちょっと可哀想だ…)
彼の足の上に乗せられるお弁当はいつも色とりどりで、私のと比べるのも申し訳ないほど輝いて見える。こんなお弁当作ってくれる人がいるのかなっていつも気になってたんだけど、もしかしたら彼の双子の弟である奥村雪男が作っているのかもしれない。なんでもできそうだし、あながち有り得なくもない。



「いつも美味しそうだよね」

「…本当にそう思うか?」

「嘘言ってどうするの。私なんか毎日冷凍食品と残り物だし…羨ましいよ」



正十字学園は金持ちの生徒が大半を占めていて、ランチなんかも一食で2千円が飛んでいくような高級料理ばかり。お弁当人口なんて数えるくらいしかいないんじゃないだろうか。言うまでもなく私と彼はその中の1人。奥村雪男も毎日彼と同じお弁当を食べてるみたいだけど、あんなお弁当だったら毎日自信持って食べられる。
質素なお弁当をつついていると、隣の彼は何故か嬉しそうに照れ始める。自慢の弟だってことだろうか。入学したばっかりの頃にも一度聞いたような気がするが、次の彼の言葉に思考が一瞬停止した。



「俺が自信あんのってさ、昔っから料理だけなんだよな」



照れたような彼を思わず見詰めてしまった。え、なんだ、そういうことなんだ。食えよ食えよと気前よくおかずを私のお弁当箱に入れてくれる彼にありがとうと呟いて、彼が腕を振るったであろう料理に箸をつけていく。意外というかなんというか。高級料理でも食べてるような感覚で美味しいと呟くと、彼はまた眩しいくらいの照れ笑いを浮かべて私の肩に一瞬だけかるく体重をかけてきた。



意外な器用さ

(今度作ってきてやるよ、ってそんな優しさに笑みが零れた)










―――――
こんな関係になれたらいいと思う。彼が悪魔とバレた後の話。


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