「これから悪魔を召喚する」



今はネイガウス先生による魔法円・印章術の授業。大きなコンパスを使って地面に魔法円と呼ばれるものを描いた。色んな授業を進める度に自分が普通からかけ離れているようで怖くなっていく。だけどこれが現実。悪魔が見えるのも、それに関する勉強をしているのも全てが真実なのだ。



「召喚には己の血と適切な呼び掛けが必要だ」



先生は魔法円に掌をかざし呼び掛けを行う。手から滴る血が魔法円に落ちるとそこから不気味な生き物が現れた。制服の袖で口元を覆って、強烈な硫黄臭が入ってこないようにした。



「悪魔を召喚し使い魔にすることができる人間は非常に少ない。悪魔を飼い慣らす強靭な精神力もそうだが、天性の才能が不可欠だからだ。今からお前達にその才能があるかテストする。先程配ったこの魔法円の略図を施した紙に自分の血を垂らして思いつく言葉を唱えてみろ」



最初に言葉を唱え出したのは神木さんだ。そしてその使い魔と呼ばれるであろう白狐が2体現れた。それに続こうと他のみんなも同じようにやってみるが、彼女のように上手くはいかなかったらしい。感嘆の声を上げた杜山さんも同じようにやってみる。



「おいでおいで〜………なんちゃって……」



何も起こらない、そう思ったとき緑の小さな生き物が現れた。先生が言うには緑男――グリーンマン――の幼生だと言った。小さなそれは杜山さんにピッタリくっついていて、誰から見てもきっと凄く可愛い。
感心していると次に先生の視線が捉えていたのは私だった。鋭い視線に少し怯む。お前もやってみろ、低い声でそう言われて私はぎゅっと紙を握り締めた。針で人差し指を刺すとチクッとした痛みと共に赤い液体が浮かんだ。それを紙に付ける。思い浮かんだ言葉を言え、と先生は言った。なんだろうとかどうしようとか、何も浮かばないまま暫くの沈黙が流れる。みんなが私を見ているのが分かった。そのときふと、浮かんだ言葉があった。



「…――Viens avec moi.」



どこの言葉か、何の意味なのかもわからないけれど浮かんだ言葉はそれだった。誰に教えてもらったのかもわからない。だけど確かに、その言葉はそこにあった。
一瞬、風が辺りを包み込む。身体が浮くような感覚と重い空気に息を呑む。



「白虎、か」



白虎。白い虎。ホワイトタイガー。私の身体よりも大きなそれが、辺りを睨むように見渡す。ガルルル…そんな声に一瞬怯んだその瞬間、瞳をギラつかせたそれは巨体ごと私に向かって来ていた。周りの悲鳴が聞こえる。―――やられる、そう思った瞬間白虎は大きく横にはじき飛ばされた。先生が私から半ば強引に奪い取った紙を破くと、横たわっていた白虎は煙と化して消えていった。











―――――補足

「私と一緒においで」


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