「夏休みまでそろそろ一ヶ月半切りましたが、夏休み前には今年度の候補生認定試験があります。候補生に上がるとより専門的な実践訓練が待っているため試験はそう容易くはありません」



授業が始まって早速、奥村雪男はそう言った。候補生――エクスワイア――認定試験。今は確かペイジと呼ばれる祓魔訓練生だったはず。今よりも難しくなるその候補生とやらに、私はなりたいとは思っていない。この試験で落ちてしまえば、辞めるとは言えなくてもそうなってしまうと言うことだろうか。これはチャンスかもしれない…――そう思った私は本当に性格が悪いのかもしれない。一生懸命頑張ってる皆には申し訳ないが、私にはそれしか思い浮かばなかった。
候補生になるために来週から一週間強化合宿を行う、らしい。奥村雪男はプリントを配り始めた。



「合宿参加するかしないかと…取得希望の“称号”をこの用紙に記入して月曜までに提出してください…」



軽く頭を下げて、渡されたプリントに目を通す。見慣れない、読み方も定かじゃない漢字が並んでいる。サッパリわからない。どうしようかな…そう思いながらまた小さく溜め息を吐く。合宿はきっと行かないだろう。それに候補生になるつもりもない。…――だったら意味を知る理由もプリントを提出する意味もない、か。
小さく溜め息を吐いて筆記用具を鞄にしまいこみ、何度も溜め息。



「むむむさーん」



呼ばれた方に顔を向けると、志摩クンが私に向けて軽く手を上げている。周りにいる奥村燐、勝呂クンと三輪クンも訝しげな顔で彼と私を見比べている。気にすることなく私を呼んで、呼ばれるがまま私も彼らの元に近寄っていき奥村燐の隣に少し距離を開けて並んだ。



「むむむさんも称号の意味知らんのやろ?奥村くんも知らんみたいやからちょうどええんちゃうか思て」

「なんだお前も知らねーの?」

「え………う、ん……」

「チッ…何なんやお前らはっ…!」



勝呂クンはあからさまに顔を歪めて私と奥村燐を見比べ、志摩クンはそんな様子に笑顔を浮かべた。


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -