学園の授業一日目は、前日の予習のおかげで何とか理解できた。今のところ大丈夫。まだ一日目だけど。それから残念なことに友達も未だいない。大丈夫まだ一日目が終わっただけだ、そう言い聞かせながら明日はどうなるだろうと不安にもなる。やっぱり私は何故だが浮いている。大丈夫、まだ一日目。
それはまだいいとして問題はこれから行かなければいけない塾の方だ。鞄に入れた鍵を取りだし、手のひらに乗せて眺めて出るのはため息だけ。現実世界から一気に引き離されるような変な気分になって気持ちが沈んでいく。今日はやめようかな…そんな気持ちで扉から離れるべく振り返ると誰かとぶつかった。



「何だ行かねぇのか?遅刻するぞ」



彼の手により開けられた扉の向こうには、この間見たあの場所が広がっていた。わざわざ扉を開けたまま私を待ってくれている彼に今日は行かない(行きたくない)とは言えず渋々足を踏み入れた。
微妙な距離のまま彼の少し後ろを歩く。今日はあの犬はいないらしい。彼に聞きたいことは幾つかあるが話し掛けるタイミングや内容の整理がつかず声をかけられない。どんだけチキン野郎なんだ私。
下を向いていた私の目の前に彼の背中が現れて私の足は急停止。うわ、なんて声が出て思わず口元に手を持っていく。見上げると彼は私を見下ろしていて、その視線に睨まれているのかと怖くなって固まってしまう。



「お前、名前なんつーの?」

「な、名前?…むむむです、むむむむー」

「俺は奥村燐。先生やってる奥村雪男とは二卵性の双子なんだ」



自慢の弟だよ、なんて聞いてないけどやけに誇らしげな彼の表情に緊張していた気持ちは少し解れる気がした。ここに来てからこうやって人と話すのは初めてなような気がする。友達がいないんだから仕方ないけど、やっぱり誰かが横にいるだけで気持ちは不思議なほど軽くなる気がする。教室につくまで少しだけ話を続けた。だけど祓魔師については何一つ聞けなかった。


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