入学式が終わった。みんなすぐに友達が出来たみたいで、一人で居る私が浮いているように感じる。――否、感じるではなく実際にそうなのだ。一人でいなくたってこんなに地味でパッとしないまるで田舎者の私の存在自体が場違いなのには間違いないのだから。
小さくため息を吐いた。そして塾のことを思い出した。入学式が終わったら行けばいいと言われて、何故だか一つの鍵を渡された。塾の場所は知らないが、これで扉を開ければいいとそれだけ言われて。どこの扉を開けるのだと聞けば答えは“どこでもいい”とそれだけで、それ以上の説明はくれなかった。


( どこでもいいって言われても )


またため息。ポケットから取り出した鍵を握り締めて辺りを見回して適当に鍵穴を探す。だけど鍵の形は全く違い、これがささるとは思えない。一体どうしろっていうんだ…そんな思考のまま投げやりに鍵を当ててみる。



「……!」



ささるはずのない形の鍵がささってしまった。どうして、何で、と妙な焦りを感じながら捻ってみると鍵はカチャッという音を立てて開いてしまったのだ。
恐る恐る扉を引くと、中は外観よりも遥かに大きな建物になっていた。キョロキョロしてみるが人は誰一人として見当たらない。どうしようどうしよう…若干パニックになりながら鞄を握り締めて部屋を出ようとすると、足音が聞こえてきて視線を向けた。そこに居たのは一人の男の子と小さな犬。近付いてきている二人を眺めていると私の側で足を止めた。



「…お前も祓魔訓練生か」

「……ペ、ペイ…?」

「貴女も一年生のようですね。授業はもうすぐ始まります、急いだ方が宜しいかと」



スタスタと歩いていく二人を唖然として見守りながら、ハッとして私も彼らの後を追った。教室に入ると生徒数はやけに少なくて内装もかなり傷んでいるように見える。視線を感じながら一番後ろの端の席に座る。授業まではまだ少し時間があるらしい。
少し落ち着いてさっきの出来事を冷静になって考えてみた。間違いなく、あれは犬。なのに犬が、何故か私たちと同じ言葉を話していた。どうして、何で、犬だよ、話すわけないんだよ――だけどそれは確かに目の前で起きていた。有り得ない筈なのに、なのに、



「はーい静かに。席について下さい。授業を始めます」



響いた声に一瞬だけ小さく肩が跳ねて思考が逸れる。パッと顔をあげればそこに一人の先生がいて、思わず目を見開いた。そうなるのも仕方ないと思う。現れた先生ははついさっき見たばっかりの優秀な男の子――奥村雪男だったからだ。


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -