正十字学園。今日、私が入学する超名門と言われる学園だ。どうして私がこの学園に入学する事になったのかは正直よく分からないままこの日を迎えた。特別勉強が出来るわけでもないし特に秀でた部分があるわけでもない。お金だってあるわけじゃないのに、何故だか入学はスムーズに出来た。
真新しい制服に黒のハイソックス。これまた真新しい鞄を握り締めたまま踏み入れた学園の大きさには、とにかく驚くしかなかった。知らない生徒に囲まれて新入生代表の挨拶が始まり、凛とした声が大講堂に響き渡る。
志なんかない。目指す場所があるわけでもない。私がここに入学した理由は簡単、親に行けと言われたからだ。ついでに言われたのは塾にも通えと言うこと。塾にでも通わなきゃこんな名門校の授業にはついていけないと思うけど、不安だった。進学先を決めたときからあれだけ必死で勉強したのに、正十字学園に合格したのは奇跡だってくらいの評価しか与えられなかった。正直、その時点で私には無理だってわかってた。勉強についていけなくなるのも時間の問題だろう。



『――新入生代表 奥村雪男』



ああいけない、聞いてなかった。新入生代表の挨拶は入試トップの人がやることになっている。真っ直ぐな瞳に真っ直ぐな声。私とは正反対のそれがなんだか羨ましくて、そしてどこか妬ましくもあった。



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