船の外は真っ白な世界。雪が降ってるんだと気付いて外に出ればそこは当然のように寒い。吐く息も真っ白で、ここは冬島っていうところなんだろうなって少ない知識の中でそう思った。さっきまではぽかぽかした春島にいたから今はロンT1枚の薄着。ジャケットとかコートみたいな厚手の服は持ってなくて、取り敢えずその辺りにある薄手の服を着込んだ。まだ寒いけどさっきより随分マシ。


「…寒い……」


ポツリと呟いた言葉もまるで雪に吸い込まれたみたいに消えてなくなる。みんなは少し前に街に入っていって今はこの船には私だけ。欲しいものも特に無かったし、何より治安が悪いと評判なこの島に私が降りることを皆が賛成しなかった。要は留守番中。
真っ白な雪を素手で触ると当然冷たい。それでも綺麗な雪に手を伸ばし、まだ何の跡も付いていない場所に小さな手形を残してみたり。震えるくらい寒いけど、それでもこの景色の中では童心に返ったように夢中でそれに触れていられた。


「あ…おかえり」

「おかえり、じゃねェだろ何してンだよオメェは」


しゃがみ込んで、震えながら、手や鼻を真っ赤にしながら雪だるまを作る私を見て、一番に帰ってきたゾロは盛大なため息を吐いた。三つ目の小さな雪だるまを完成させてゆっくり立ち上がり、手を擦り合わせながら彼に近寄る。寒いね、と声をかけると当たり前だろうがって言い返される。


「邪魔だどけクソマリモ……って、」

「おかえりなさい」

「ただいま………じゃなくてその格好、風邪引くぜそんな薄着じゃあ」


2番目に帰ってきたサンジがズルズルと引きずってきた食材を船に乗せると、その手はおもむろに私の手を掴む。彼の手は私の手と違って凄くあったかい。雪を触ってたから冷たいのは当然なんだけど、サンジは珍しく苦笑いを浮かべて「霜焼けになるぜ」と言葉を零した。


「もう十分遊んだだろ」

「風邪引かれちゃたまんねェしなァ」


二人に言われて船の中に入る。それでもまだ寒くて震えてるとサンジが着ていたジャケットをそっと私にかけてくれて、あったかいスープを作ってくれる。隣に座ったゾロは何も言わないけど、きっと呆れてるんだろうなぁ、と、思う。


「雪、珍しいのか?」

「…ううん、そんなこともないんだけど…」

「だけど?」

「ああやって遊ぶ事ってなかったなぁと思って。小さい時はよく遊んでたんだけど今はもう全然」


コトン、とミネストローネみたいなスープを机に差し出してくれて、私とゾロもそれを口にする。冷え切った体には、その温かさが身に染みた。
1日明けた次の日、もう冬島は随分前に脱出している。ベッドの隣に腰掛けたサンジはタバコを咥えて火を点け、ゾロは壁にもたれて盛大な溜め息。


「言わんこっちゃねェ」

「期待を裏切らねェなァほんとに…」


案の定、しっかりと風邪を引いた私。熱めのスープを持ってきてくれたサンジは額のタオルを退け、タオルのかわりにその手を当てて苦笑いを浮かべた。


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