「これとこれとこれとこれと、あとこれとこれ」



ドサッと、ご丁寧にわざわざ棚から取り出された黒塗りのファイルは一体幾つだあるのろうか。
ギッシリ中身の詰まったそれを、今からキッチリ仕分けろと目の前の風紀委員長が私に命じたのだ。
…自分が風紀委員になっただなんて、あれから一度も認めたことなんかないけど。
それでも目の前の彼には逆らえなくて、だから私はあの日あの時から風紀委員の一員である。
学ランの男子生徒に囲まれながら、一人だけ正規の制服に身をつつんだ女子である私が浮かないわけがない。

主に言い渡される仕事はお茶汲みと今みたいな誰がやっても出来るであろう資料整理がほとんど。
コピーやシュレッダーなんかも言い渡されるし、まるで新人OLみたいだ。



「じゃあ草食動物の見回りにでも行ってくるよ」



黒塗りの椅子から立ち上がり、口元に薄らと笑みを浮かべて部屋を去っていく。
そういえば風紀委員の活動拠点がいつの間にか応接室になっていたのには驚いた。
きっと雲雀さんの権力やら拳やらを振りかざして得たものだろうけど、よく先生たちが許可を出したものだと思う。
お客さんが来たらどうするんだろう。

パタンと閉じられた扉。
応接室に一人だけしかいない状況は、不気味に静かでなんだか気持ちが落ち着かない。
でもやらなきゃいけないから、客人用の机に常備されているノートパソコンを立ち上げる。
椅子に座ったんじゃ机が低すぎるから、仕方なく床に座り込んでひたすら数字や文字を打ち込んだ。



「終わったかい」

「…まだまだです」



雲雀さんが帰ってきたのはあれから40分程経った頃。
やっと三分の一くらい終わったそれを見た雲雀さんは「まぁゆっくりやればいいよ」って意外な言葉を投げ掛けてくれた。
早くしないと咬み殺すよ、なんて言われそうなものだけど彼は意外と人を急かすことや責めることはしない。
私の限界を言ってるのかもしれないけど、それはそれで有り難い。
否、無理矢理やらされてる時点で有り難みなんてないんだけど。



「あとどれくらい?」

「半分…くらい、です」

「ふーん」



ふーん、って…。
雲雀さんは椅子から立ち上がり私の傍に来て床に膝を着き、打ち込んだ文字列を上から適当に眺めていく。
それから残った資料を適当に捲り、パタンとファイルを閉じた。



「君にしては頑張ったんじゃない」



続きは明日でいいよ、って。
あれ雲雀さんってこんなに優しい人だったっけ?と戸惑いながら、とりあえず保存してパソコンを閉じた。
微妙に足が痺れている。
地味に鈍った感覚の足を無理矢理動かして立ち上がり鞄を掴んで部屋を出る。
どうやら雲雀さんも帰るらしい。
応接室に鍵を掛けた雲雀さんの背中に小さくお疲れ様でしたって投げ掛けて、私も反対方向にある下駄箱に向かった。



風紀委員会
 活動報告書



(少し慣れてきたかもしれない)


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