頼まれたら断れない、それが良いところであり悪いところでもある。
…と、オレは思う。



「要って実はいい人だよね」

「は?…なんだいきなり」



目の前で作業をする要を、頬杖をついてぼーっと眺める。
手伝う気は、ない。
ついさっき来たばっかりのオレが手伝うことなんてないし、そもそも何してるのかも知らない。
帰ろうと思って廊下を歩いてたらたまたま教室に要がいて、暇だったから立ち寄っただけ。
もうすぐ終わるって言ったから待ってるだけ。



「もうすぐって言ったじゃん」

「まだ5分も経ってねーよ」



一瞬オレの方を見てあからさまに顔を歪めた。
それから視線はすぐに手元で生徒会面倒だねって言えば生徒会関係ねーからって帰ってきた。
じゃあなんでやってんのって聞けば、頼まれたからと理由はそれだけ。



「断ればいいのに」

「断る理由がねーだろ」

「…要って損してるよ絶対。放課後みんな帰ってるのに一人でこんなことしてさ」

「別に一人じゃねぇよ、あいつだよ、むむむと」



ガラッと空いたドアの方を見ると、プリントを抱えたむむむさんと目があった。
今オレが座ってる椅子が最初から要の方を向いてたのは、むむむさんが座ってたからってわけで。
ごめんって言って立ち上がろうとすると、いいよ私こっち座るからって別の椅子を持ってきて机の横に座った。
コピー取りに行ってたらしい。
話しながら作業を進めていく二人を、相変わらず眺めるオレ。
要とむむむさんが仲良くなってるのを見て不思議な気分になる。
要が女子とこんなに話してるとこあんまり見ないからだと思う。


(まぁ人の事言えないけど)


手持ち無沙汰でいると、ポケットに入れてた携帯が震える。
メールを開くと相手は母親で、豆腐買ってきてっていうお使いの内容だった。

二人とも真面目だと思う。
それから絶対、損してる。
やらなくてもいい事をわざわざやる必要はないんじゃないかとオレは思うけど二人はそうじゃない。
なんか二人、似てる気がする。

やっと終わったと机の上を片付けて、荷物を持って三人で職員室に向かった。
俺とむむむさんは外で待ってるだけだけど。
その時なんとなく聞いた、めんどくさくないのって。
そしたら余りにも直ぐに帰ってきた返事に少しだけ驚いた。



「面倒臭いよ」



って。
ホントに嫌がってるの?なんて聞きたくなるくらい君は、困ったような笑顔を浮かべる。
そうですかってそれしか言えなかった。
でもどうせやることないから別にいい、そう言ったむむむさんはやっぱり少し要に似てると思った。



弱々しい抵抗

(苦笑いがきっと君の精一杯)










―――――
タイトルと関係なくなってきてるけど、一応タイトルの内容目指して書いてたんだよってことをわかっていただきたい。


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -