今日は父の日。
今まで母の日はなんとなくお母さんにプレゼントとか渡してたりもしたけど、父の日に関しては何故だかノータッチだった。
全然、嫌いとかそんなんじゃなくて、ただ、なんとなく。
お母さんと父の日だよって話をしてて、そしたら今年は何かプレゼントしてあげれば喜ぶわよ、って。
だから、今日は朝からプレゼントを買いに近くのショッピングセンターまで来た。
何をあげればいいのかわかんないし、高価なものは買えなかったけど、気持ちは込めたつもり。
当日にプレゼント買うとか、事前に準備しなさいって言われそうだけど。
「あれ」
「…あ、こんにちは」
買い物の帰り道、たまたま寄った本屋で祐希くんに遭遇。
新刊のコーナーから何冊か手に取っていた祐希くんは私に気付くと軽く会釈をしてくれた。
「むむむさんも漫画ですか」
「や、なんかないかなーって来ただけなんだけど。今日はひとり?」
「向こうに悠太…と番長が」
「番長…?」
指差したのは音楽雑誌の方で、祐希くんによるとそこに悠太くんと番長がいるらしい。
番長が誰かはわからないけど、そうやって呼ばれるくらいだから怖い人でもいるのかもしれない。
こうやってお店で会って話するのはいいけど、それからどうしようか、悩むのはいつものこと。
私が何気なくその場を離れようとしたら祐希くんは「もう帰るんですか」って言ったから、私は曖昧に首を傾げる。
レジを終わらせた祐希くんはお待たせしましたって言ってくれたから、一緒に悠太くんと番長さんのところに向かうのは自然な流れなんだろう。
「あれ、むむむさん…」
「何だお前の彼女か?生意気だなぁ」
「ちょっと、悠太、何か言ってやってよ」
「むむむさんは俺のクラスメイトです」
ほー、って、高い位置から私を眺める番長さんは、ワイルドでダンディーで。
「ちなみにこの人は祐希がバイトしたてたお店の店長さん」
「…てことは岬ちゃんのバイトの店長さん」
「お。あいつ知ってんの?」
仲良しです、って伝えると番長さん…もとい、店長さんは少しだけ笑う。
あいつ頑張ってるよ、って。
そう言ってくれたのが、まるで自分のことのように嬉しくなった。
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