「要っちがご乱心だったわけよ」
「へぇ、珍しいねぇ」
自販機にジュースを買いに来たところ、橘くんに遭遇してそんな話をしている。
「いや、要っちはいつもご乱心なんだけど」
「え、そんなイメージないよ」
「えー!むむむさんって要っちの事どんな風に思ってんの?」
「どんな風…うーん。真面目でしっかりしてて、優しくて、頼もしい」
「そんないいイメージ!?優しいとかないわー優しくされたことないわー」
不貞腐れる橘くんに私は苦笑い。
確かに普段の塚原くんと橘くん見てるといつも怒られてるような気がしなくもない。
悠太くんや松岡くんといるときはそんなことないんだけど、祐希くんと橘くんは生粋の問題児なのかな。
そうだ、塚原くん、突っ込みキャラだ。
「ちなみに俺のことは?どう思ってる?」
「橘くん?橘くんはねぇ、明るくて面白くて、愉快で…楽しい人だと思うよ」
「おおっ!?なんだよー!照れるじゃん!!」
嬉しそうな橘くんはにっこり笑う。
こう、喜怒哀楽が分かりやすくて、表情が豊かで、そんな橘くんは私にとっては太陽みたいな感じがする。
きらきらしてる。
私も橘くんみたいに、明るくて前向きだったらまた違う人生だったのかなぁって思うし、ときどき、羨ましいって思う。
「むむむさんはねぇ、大人しいように見えて実は楽しいこととか好きでしょ?頼りないところもあるけどー、素直でー、ゆうたんに恋する女の子!」
「それ、私のイメージ?」
「そう!最近ゆうたんとどうなのー?なんかいいことあった?」
「普通だよ、特に何かあったわけでもないし」
「体育祭とかあったんだけどなー…フォークダンス!フォークダンスは踊ったでしょ?」
「フォークダンス緊張したよー!でもね、なんか、前までは見てるだけで精一杯だったのに、橘くんたちと仲良くなって話せるようになっただけでも幸せだよ私」
うん、ほんとに、ねぇ。
一年生のとき、二年生になったとき、まさかこうやって悠太くんたちと仲良くなる日がくるなんて思ってなかったんだよ。
見てるだけで良かったし、時々すれ違うだけで嬉しかったから。
切ないとか思うこともあったけど私なんかが何を望んだって無駄だってわかってたから…今もそれは変わらないんだけど。
って、私がそんなこと考えてると橘くんは私の背中をバシンと叩いた。
「そういうとこ、すげーいいと思う!!だから応援したくなるんだよなぁむむむさんって!」
私のことでも自分のことみたいに喜んでくれる、そんな“友達”ができて本当に嬉しい。
がんばれ、って、ニッコリ笑った橘くんは本当に太陽みたいだった。
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