黒の学ランに赤いハチマキ。
団長を中心に、後ろに綺麗に列になった先頭に祐希くんがいる。
「赤組応援団 応援始め!!」
『押忍!!』
そこから始まる応援は、なんていうか、もう言葉にならないくらい、格好良くて。
男らしい声が響き渡って、周りの女の子達からは黄色い歓声も上がっている。
前を陣取ってみている後輩の子は『浅羽先輩かっこいい』って。
でも、ほんとに、かっこいい。
いつもののんびり、マイペースな祐希くんはどこにもいない。
「かっこいいね」
「…そうだね」
私が呟いた言葉に、岬ちゃんも笑って頷いてくれた。
頑張ってるなぁ…って不思議な気持ちになる。
ギャップのせいだろうか。
「今のでまた人気出たね、絶対」
そうだよね、って。
ほんと、特に後輩の子達にすごく人気になったんじゃないだろうか。
泥だらけで退場していく背中はやっぱり大きく見える。
「よーし、あともうちょっと!打倒青組!」
気合いを入れ直した橘くんが、松岡くんの腕を引っ張ってそのままどこかに走っていった。
「アイツは何であんなに元気なんだよ…」
「イベントってだけでテンション上がっちゃうんだろうね」
「橘ってほんと単純すぎ…。ま、楽しいのはいいことだけど」
「さぁ、そろそろ俺たちも戻ろうか」
そうだね、って。
私たちも次の競技のために自分のクラスの場所に戻ることにする。
私が出る競技はもう全部終わっちゃったけど、体育祭はまだもう少し続く。
「祐希たちには負けてられないね」
最後の体育祭が、素敵な思い出になれば嬉しいと思う。
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