「もう、どこ行ってたの!」
「ごめんちょっと寄り道…」
岬ちゃんに怒られながら、私も皆のところで応援が始まるのを待つ。
悠太くんや橘くんたちもそこにいて、もうすぐだなーなんて楽しそうに祐希くんの出番を待っているようだ。
橘くんはチアガールチアガールって騒いでるみたいだけど。
「お!始まる!」
グラウンドにポップな音楽が鳴り響く。
小走りで真ん中に走っていくチアガールたちは、ほんとに可愛い女の子たち。
並んで見ればそこには小さな男の子も混ざっているようで、岬ちゃんと一緒に可愛いねーなんて笑った。
ポンポン振って、振り付けもかわいくて、いいなぁなんて見ていると、何となく、本当に何となくだった。
何となく、高橋さんが私の目に入ったんだ。
「結構本格的なんだね」
「すごいよね」
チアガール姿の高橋さんはとっても可愛く笑っていて、頑張っている。
岬ちゃんに、みんなにばれないように一瞬だけ私はこっそり悠太くんに意識を向けた。
一瞬しか見えなかったけど、その目は真っ直ぐチアガール達を見ていた。
――…なんとなく。
ほんとに全部なんとなくなんだけど。
その目が見ているのは高橋さん、なのかなぁ、なんて、思ってしまうんだ。
それで勝手に落ち込んで、胸がギュッとなって。
そうって決まったわけじゃないんだけど、でも、こういう場面ってどうしてもそういう方向に考えが向いてしまう。
「あ、もうすぐ弟だよ」
「どうなんかねーゆっきーに応援団なんか務まるのかね」
「かねって…千鶴くんのせいで祐希くんやることになっちゃったんじゃないですか」
チアが終わり、いよいよ祐希くんたちの応援団が登場する。
ドキドキ、緊張してるのは私だけなんだろうか。
橘くんや松岡くん、塚原くんもあんまり心配してるわけでは無さそうだし、悠太くんも「毎日練習してたから大丈夫」って。
そう言った。
「あっ、出てきた出てきた」
ドーン、ドーン、と。
グラウンドに鳴り響く太鼓の音が、応援団の始まりを告げる。
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