そこは校舎裏の影。
出ていこうとした私の足を止めたのは、そこに祐希くんともう一人、さっき少しだけ話した茉咲ちゃんがいたからだ。
私は見付からないように、そっと隠れる。
悪趣味だって思われちゃうかなぁなんて自分に苦笑いしながら、私はそこを動けずにいる。
チラッと覗いてみれば、しゃがみこんで膝を抱えている茉咲ちゃんに構っている祐希くんの姿。
ぱらぱらっと葉っぱを乗せたり、指で指してみたり。



「もーやめてよ!!髪型くずれるから!!」



じゃれあっているように見えて茉咲ちゃんは結構本気で嫌がっているらしい。
こんな風に誰かを構ったりしている祐希くんを見るのは初めてなような気がする。
まだ何か話しているけど、その声は二人にしか聞こえないくらい小さなもので。
覗き込むのも悪い気がして、私はただじっと身を潜める。
しばらくそこでじっとしていると話し声が途切れ、物音でもう祐希くんが歩き出したかなって判断。
覗いてみれば祐希くんの背中が見えて、私もゆっくり後を追う。
しゃがんだままの茉咲ちゃんがそんな私に気付いて私を見上げる。



「覗いてた訳じゃないんだけど…なんかごめんね」

「…別にいいわよ」



プイッと顔を背けた茉咲ちゃん。
私が小さく彼女の名を呼べば、どうして知ってるのとでも言うように驚いた顔で私を見ている。



「おだんご、よく似合ってるよ。チアガールの衣装もすごく可愛い」



私の言葉に頬を赤らめた茉咲ちゃんはそれを隠すようにまた膝に顔を埋める。
なんだか、ほんとに可愛い。
と、私は先に歩いていった祐希くんのことを思い出して足を急がす。



「…わ、」

「覗き見ですか」



真っ直ぐ進んで、あれ居ないのかなって思えば校舎の影に、さっきの私みたいに身を潜めている祐希くんがいた。
びっくりして見上げると、いつもの表情でじっと私を見ている。
覗き見じゃないんだけど祐希くん追い掛けてて、と説明すると彼はそうなんですかと呟いた。



「学ラン似合ってるね」

「…暑いだけですよ」

「長袖だもんねぇ」



自分の学ランを見た祐希くんは小さく溜め息を吐いてしゃがみこんだ。
学ランの袖で口許を隠すようにしている。
何度か見たことあるこの姿、なんだか少し微笑ましくも見える。



「携帯とか持ってきたら良かったな」

「…なんで?」

「せっかくだから記念撮影?」

「せっかくって…」

「あ、祐希くん早く行かないと、みんな集まってるみたいだよ」



ゆっくり立ち上がった祐希くんは相変わらず口許を隠したまま。



「がんばってね」



小さく頷いた祐希くんは頭をペコッと下げてグラウンドに歩いていく。
最後に軽く上げてくれた右手に、何故だかすごく頼もしさを感じた。


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