盛り上がる騎馬戦を横目に、私は次の借り物競争の為に集合する。
私の前にいるのは同じクラスの女の子で、振り返って笑顔で話し掛けてくれている。
「橘くん達っていつも楽しそうだよね」
「うん、賑やかだよね」
「むむむさんって浅羽くん達と仲良いよね。よく話してるみたいだし、羨ましいなー」
「羨ましい、かな…普通に話してくれるし、それに仲良いかって言われたらよくわからないし」
「話してくれる、んだろうけど…なんかさぁ、何話せば良いのかわからないんだよねぇ」
「私も同じだよ」
そうなの?って驚かれたけど私は頷いた。
塚原くん、橘くんとはよく話すけど、祐希くんも話すかもしれないけど、肝心な悠太くんはあんまり話す機会がない。
話しにくいとかそういうのじゃなくて、なんか、緊張するっていうか。
全部私の責任なんだけど。
……なんて考えてるとちょっと落ち込む、かも。
「ま、とりあえず今は競技!せっかくやるなら1位取りたいし、頑張ろうね!」
にっこり笑ったクラスメイトに私も笑って、頷いて返した。
列に並んでいると、隣には小さな女の子。
私が何度か見ているこの女の子は、確か、茉咲ちゃんっていう名前だったはず。
松岡くんや橘くんたちとよく一緒に居るみたいだから知ってる。
私が少し見すぎていたのか、茉咲ちゃんめチラチラ私を見て少し戸惑っているらしい。
申し訳ないなって思って見ないようにしていると、今度は茉咲ちゃんが私を見ていた。
「…え、っと?」
「べ…別に何でもないわよ!」
お、怒られちゃった…。
いつの間にか騎馬戦が終わっていたらしく、一組目の子たちがスタートする。
順番まで座って待機するわけだけど、借り物を探している皆を見てどんなお題が書かれていくのか不安に思ったり。
みんな結構走り回っているみたいで、物だけじゃなくて人とかも書かれているみたいだし。
「変なの、当たらないといいね」
隣の茉咲ちゃんに話し掛けると、驚いたように私を見て、それから少し戸惑ったように頷いてくれた。
いつの間にか騎馬戦も終わったらしく、いよいよ借り物競争。
一組目に出ていった人達を見送りながら、次に迫ってきた自分の番にほんの少し気を引き締める。
前の人たちが終わりスタート地点に並ぶ。
『位置について、よーい…』
本日二度目のピストルの音を聞き、勢いよくスタートラインを飛び出した。
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