体育祭を明日に控えて、今日から6月が始まった。
6月といえば衣替え。
鮮やかな青いブレザーやそれぞれ着ていたカーディガンの色も、シャツの眩しい白色ばかりに変わった。
何だか見ているだけで爽やかな気持ちになるような気がする。
「やだなぁ、明日絶対暑いじゃん」
「体育祭日和だよ」
少し前から腕捲りもしてたし流石に6月を前にして暑さは全開だったけど、今日はまた一段と暑くなりそうだ。
岬ちゃんもいつもは下ろしている長い髪を後ろで纏めている。
午前中はいつも通りに授業をして、午後は明日の準備。
教室の机は端に寄せられる、真ん中にはクラス旗が広げられている。
ペンキやアクリル絵の具でカラフルになっていくそれを眺めながら、私と岬ちゃんも青色の団扇に白で「必勝」の文字を書いていく。
そして各々で好きなようにペイントされていくそれは、とっても賑やかでまた明日が楽しみになる。
「…また何かアホな事してるし」
岬ちゃんがドアの方を見て笑顔を浮かべたから私もそっちを見ると、上の窓から見える金色。
橘くんがそんな私たちに気付くとニッコリ笑顔で手を振ってくれた。
「相変わらず暇人だなぁ」
「でも凄く楽しそうじゃない?」
「楽しそう?…まぁねぇ」
橘くん達がやってることがバカな事って言われればそうなんだけど、学生っていう立場を凄く楽しんでるようにも見える。
見えなくなった橘くん達はきっと塚原くんにこってり絞られてるんだろう。
岬ちゃんはそう言ってまた笑った。
「俺らの団扇は?」
「あ、あるよー」
「ありがとうございます」
「あとは自由に絵描いたり字書いたりしていいんだって」
二人に団扇を渡すと、塚原くんは空いてる椅子に座って早速自分を扇ぎ始めた。
悠太くんも同じように扇いでいる。
確かにこの教室、人口密度もあってかいつもより暑い気がする。
「二人は何か書いたの?」
「ううん、そのままだよ、ね」
「うん。こんだけ“必勝”書いたんだからもういいよ」
「何か描きゃいいじゃねぇか」
「塚原が描きなよ」
「……」
「え、何か変なこと言った?」
黙りこんだ塚原くんに、岬ちゃんは私と悠太くんを見て意見を求めてくる。
確か塚原くんって絵、下手なんだよね。
私が笑うと岬ちゃんは更に分かんないって顔をしていた。
ムッとした塚原くんは、持っていた団扇を私に向かって大きく扇いだ。
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