皆がバスに乗って映画村に行った。
今頃楽しんでるんだろうなぁって思うとやっぱりちょっと切ない。
私の様子を見た先生がもう大丈夫そうねって言ってくれたから、置いておいてくれた朝ごはんを食べに行く。
広い部屋にポツン、と。
旅館の人とかも心配してくれて、申し訳なく感じながら少し冷えた朝ごはんを食べた。



「むむむさん、もう大丈夫?」



俯きがちに歩いていた私に前から声を掛けてくれたのは、映画村に行っているはずの東先生だった。
小さく首をかしげると何かを誤魔化すように苦笑いを浮かべ、ジュースでも飲む?と私にカップのジュースを奢ってくれた。
その流れで、2つ並んだ椅子に私と先生も並ぶように座る。



「貧血って聞いたけど」

「あ、はい…」

「もう顔色もいいし大丈夫そうだね」



ふわっと笑った先生に頷いた。
なんだか変な空気。
先生もいつものスーツ姿じゃなくてパーカーとジャージだし、私も制服じゃなくて部屋着だし。
奢ってくれたジュースに口をつけて、何か話したほうがいいよね何話そう、なんて考えを巡らせる。



「せっかくの京都なのに、残念だね」

「…今まで貧血なんてほとんどなかったのに、こんな日に限ってですよ」

「はは、橘くんも熱出して映画村行けなかったみたいだし」

「え…そうなんですか?」

「うん、さっきまでここで話してたんだけど」



橘くんもここにいるんだ、なんて思うと少し安心してしまう自分がいた。
今頃電話でもしてるんじゃないかな、なんて言う先生は何だか少し楽しそうで、優しい笑顔を浮かべている。
それにしても先生はどうしてここにいるんだろう、ってその質問はなんとなく口から出てこなかった。



「そういえばむむむさんは、どう?」

「…?どう、って」

「好きな子とうまくいってる?」



ぽかんとした私を見て、先生は少し悪戯っぽく笑って見せた。
まさか先生からこんな話題を振ってくるなんて、と。
照れて俯いた私を見たであろう先生が少し笑ったのが分かってまた、私は顔を隠すようにカップに口をつけた。


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