最近心なしか塚原くんに元気が無いように見える。
ここ2、3日のことだけど、いつもみたいに廊下や教室に塚原くんの大声が響き渡ることがなくて。
体調でも悪いのかもしれない。
そうじゃないかもしれないけど、塚原くんに直接聞いてみたり声を掛けたりするのも何だかちょっと勇気が足りない。
そもそもそこまで仲がいいのかと聞かれればどうなのかわからないし。



「むむむさんなんか知らないのー?」

「知るわけないでしょ、っていうか何であんた最近ここ来んのよ」

「え?オレむむむさんと仲良しだから!何なら同盟組んじゃってるから!」



窓際の私の机に顎を乗せてた橘くんが、回り込んできていきなり私の肩を組む。

前の席が悠太くんだからここにいるっていうのが一番なんだろうけど、私にも話し掛けてくれる。
だから自然と一緒に居る時間も長くなる。
また悠太くんと前後の席になれるなんて思ってなかったから、嬉しいんだよすごく。
橘くんも凄く喜んでくれてて、そのはしゃぎ方にはちょっと焦っちゃったけど。(私より喜んでくれてんじゃないかな)



「っていうかいつの間に仲良くなってるんですか君たちは。同盟ってなんですか」

「そりゃもう、なっ!」

「あはは…」

「完全に迷惑がられてるじゃん」



祐希くんや悠太くんの溜め息に反論し出す橘くん。
座ってる私の肩に手を乗せて、前に居る岬ちゃんや祐希くんと喧嘩をし出す。

なんだか不思議だった。
最初は見てるだけでよかった。
むしろ見てるだけしか出来なかったのに、今ではこんなに近くで話したりしてる。



「どうかした?」

「…ううん、何でもないよ」



心配まで、してくれる。
嬉しいはずなのに何故かちょっとだけ、胸がきゅっとした。
嬉しいのに、どうしてだろう。
どうして。
…どうして少し、岬ちゃんが羨ましいと思っているんだろうか。



「要っち元気がねーなー」

「っていうかさ、早く行かないとチャイム鳴るよ?」

「うっおやっべ、次移動教室じゃんゆっきー急げ!」

「はいはい」



慌ただしく教室を去っていく。



「台風のような奴だねあの金髪は」

「まぁいいんじゃないですか」



チャイムが鳴って岬ちゃんも自分の席に着く。
机から教科書を出してなんとなく目を向けた塚原くんは、やっぱりどこか淋しそうに見えた。


「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -