今日はいよいよバレンタインデー。
今日の為に、昨日遅くまでかけて作ったのはブラウニー。
料理はあんまり得意じゃないけど、お母さんに手伝ってもらってなんとか完成させた。
だけど浅羽くんとかはいっぱいもらうだろうから量は少なめにして、その分ラッピングをちょっとだけ豪華にしてみたり。
いつもは持たない紙袋にそれを入れて、ドキドキしながら学校に向かう。



「…盛り上がってるね」

「心なしか匂いが甘い…」



下駄箱で会った岬ちゃんにも友チョコを渡すと、超嬉しい!って喜んでくれた。
その後すぐ提出物があるからと職員室に歩いて行く岬ちゃんを見送って私は教室に歩く。
廊下でチョコレートを渡してる女の子ももう沢山いるみたい。
東先生なんてもう両手に抱えるように沢山のお菓子を持っているように見える。(東先生かっこいいからなぁ)

少し視線をずらすと、そこには浅羽くんや塚原くんたちがいるのが見えた。
見付けただけなのになんだか緊張してドキドキしながら歩いてると、私の横を高橋さんが通り過ぎていく。



「春くん、悠太くんっ」



少し先で、2人に渡しているのが見えたんだ。
…ああ、ってなんだかよく分からない感情が胸を覆い尽くす。

高橋さんから、悠太くんに。

もうそんな関係じゃないってわかってるし、あのチョコレートには私や岬ちゃんのお金も入ってるって、わかってる、のに。



「…おはようむむむさん」

「おはようございます!」

「お…おはよう…」



松岡くんと悠太くんが私に気付いて挨拶くれて、それが不意打ちでびっくりしたのと、なんかちょっと気まずくて声が詰まった。
二人の手にはチョコレートがあって、私にもお礼言ってくれたけど何でか素直に受け取れなくて。
そんな自分が嫌になって、気持ちもだんだん沈んでいく。
手に持った紙袋をきゅっと握り締めて、この感情をごまかすみたいに笑って、教室に入った。(わざとらしかったかな…)

教室に入ると、他のクラスの子が居たりして廊下よりも幾らか賑やかに感じる。
机にカバンを乗せて一息吐くと、岬ちゃんはすぐに私のとこまで来てくれた。



「職員室まで甘ったるかった」

「バレンタインだからねぇ」



机の横にかけた紙袋を見て、視線を送ってくる岬ちゃんに首を横に振る。
まだ時間あるからさ、って私の頭に手を乗せてニッコリ微笑んでくれて、なんだか少し安心した。



「悠太くーん」

「これ、受け取って」



だけど意外とチャンスは現れなくて。
いつも女の子に囲まれてる悠太くんに近づくことすら出来ないまま、時間だけが過ぎていく。



「…渡せないかもしれない」

「その時はその時。なんとでもなるって」

「あのさ」



見上げると塚原くん。
辞典とチョコレートを持ったまま私そこに立ってて、悠太知らね?と質問を投げ掛けてきた。



「それ、塚原から浅羽に?」

「んなわけあるか!クラスの女子に渡してくれって頼まれたんだっつの…」



視線をそらして気まずそうにする。
かわいそーって爆笑し始める岬ちゃんに「うるせ!」ってちょっとだけ怒ってた。(ごめん、ちょっと私も笑っちゃった)



「そんな可哀想な塚原に」

「可哀想とか言うな!」

「むーがいいものをあげましょう」

「あ、うんそうなの、いいものじゃないかもしれないけど…」



紙袋からひとつそれを取り出すと、それを差し出す塚原くんは一瞬固まって、照れたように視線を泳がせて「さんきゅ」って受け取ってくれた。
持ってきたブラウニーがようやく1つ減ったのは、お昼休みが終わりかけの頃だった。


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