「今年」と呼んでいた一年は、気が付けば「去年」に変わっていた。
…年越しの前に寝ちゃいました。



「おはよう、年賀状届いてるわよ」

「ん…」

「それからはい、お年玉」



朝起きて、お母さんから貰ったのは届いてた年賀状とお年玉。
お雑煮食べてるときにお父さんからも貰って、なんかいい始まりだなって思った。

年賀状が届く枚数は、なんだか毎年減っていってる気がする。
今年も10枚くらいは書いたけど、もうほとんどメールで済ませちゃうから。
岬ちゃんからと、クラスと子と中学生の時の友達と、遠くにいる従兄弟からの十数枚。(…後で年賀状買いに行かなきゃ)

ご飯を食べてから年始のお笑い番組を眺める。
知らない人ばっかり。
冬なのに水かぶったり裸で雪に埋もれたり…大変だなぁなんて思いながらチャンネルを変えていく。



「…お母さん初詣行ってくる」

「今から?」

「うん、岬ちゃん迎えに来てくれるって」

「はいはい気をつけてね」



岬ちゃんから「初詣行かない?」ってメールが入って、急いで準備した。
上着とマフラーと、小さなカバンに財布を詰めて携帯をポケットに入れるとすぐに来てくれた。



「おめでとー」

「おめでとう!」



近くの神社まで歩いていく。
前にも後ろにもそんな人たちが居て、平和だねぇなんて話しているうちに到着。
やっぱり人はいっぱい。
やっぱりこの時期は受験生も多いみたいで、御守りとか絵馬とかもそんな感じのがそこらじゅうにあった。



「あ、東先生だ」

「…ほんとだ。あきらさんもいる」

「あきらさん?誰それ」

「先生のお友達」



岬ちゃんがせんせー!って呼ぶと気付いてくれたみたいで、いつもみたいに優しく微笑んで近付いてきてくれた。



「明けましておめでとうございまーす」

「おめでとう」

「おめでとー!むーちゃんのお友達?」

「そうですけど…」

「へー、大人っぽい子だね」



ちょっと嬉しそうな岬ちゃんは笑いながらいい人だね、って言った。
それから岬ちゃんは東先生にお年玉をねだってたけど、かなり困った様子で代わりに温かい飲み物を奢ってくれる。
岬ちゃんはどうやらあきらさんと意気投合したらしく、楽しそうに話してた。



「気が合うみたいだね」

「こう見るとあきらさんて凄く若く見えますよね…ああやって並んでても違和感ないし」

「昔から全然かわってないからね、身長が伸びたくらいで」



何か簡単に想像出来るなぁって思って笑って眺める。
ちょっと言い合いもしてるみたいだけど…それも楽しそうに笑ってるからいいのかな。



「むむむさん」

「……?…………あ」

「お年玉じゃないけど、」

「え、でもなんで…」

「この間道案内してくれたお礼に。ほんとは三年生の子に買ったんだけどね」

「そっ…そんなの貰えないですよ、!」

「また買えばいいだけだから」



私の手元には一つのお守り。
先生があんまり優しい笑顔で差し出してくれるから、結局もらっちゃって。
岬ちゃんには内緒、って言ってたからカバンに閉まって、振り向いた2人に怪しく見られたけど何でもないよって誤魔化した。
2人はもうお参りしてきたみたいで、そこでおわかれ。
お賽銭も入れてお願い事もして、しばらくブラブラと歩き回る。



「後でコンビニ行っていい?」

「ん、オッケー」

「年賀状足りなくって」

「あ、私も買わなきゃ」



コンビニに向かってると携帯が震える。
開くと新着メールが入ってて、宛先はまさかの“浅羽祐希”くん。
そういえばアドレス交換してたなぁって思いながら開くと、一枚の画像が添付されててドキッとした。
…文化祭の時のやつだ。



「…ん?…浅羽?」

「うん、祐希くんからあけおめメール」

「っていうかあいつらとアドレス交換してたんだ」

「祐希くんのしか知らないよ」



鬼太郎姿の祐希くんと白雪姫姿の悠太くんの写真に嬉しくなりながら、私もメールを返す。
…写真付きでくれたから写真付きで返したほうがいいのかなぁ、とか。



「岬ちゃん写真撮ろ!」

「写真?…ま、いいけど」



インカメラで写真撮影。
ああこんなの送れないかなぁって思ったし、送られてきても困るかなって気持ちにもなったけど。
…まぁいっか。



「ね、私にもその写真送ってよ」



うんって頷くと岬ちゃんが嬉しそうに笑ってくれた。
“あけましておめでとうございます。今年もよろしくね”って当たり障りのない言葉になっちゃったけど。
最後に“悠太くんにもよろしく”と付け加えて、メールを送信した。


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