12月24日。
今日はクリスマスイブ。
お母さんやお父さんには「クリスマス一緒に過ごす人もいないのか」って呆れられたけど、本当にいないんだからどうしようもない。
あまりに暇そうな私を見たお母さんは、予約していたクリスマスケーキを貰いに行くように言った。
預かったお金を財布に入れて、上着とマフラー、それから携帯をポケットに入れて家を出た。
商店街はもうクリスマスモード一色。
お馴染みのお店にケーキを持ちにいったら、おつかいを褒められて小さなマドレーヌを10個程つめこんでくれた。(昔からお世話になってるから毎年何かしらくれるんだけど)
ケーキももらってあとは帰るだけ。
ゆっくり歩いてると賑やかな中華まんのお店を見付けて、景気のいい光景だなーなんて感慨深くなった。



「お!むむむさーん!」

「……」



突然かけられた声はその場所から聞こえてきて、視線と一緒に思わず足を止める。
私を呼んだのは橘くんらしい。
みんなも私の方をむいて、そこにはいつものメンバーと東先生、もう一人黒髪の男の人がいた。
軽く会釈をすると、悠太くんと祐希くんと橘くんとそれから黒髪の人に手招きされて、ゆっくりと近付いていく。



「東先生が肉まんおごってくれるって!」

「……え、あの」

「いいよいいよ、ね、こーちゃんっ」

「…で…でも……」

「はは…むむむさんも良かったら」



東先生も笑って言ってくれたから、遠慮なく肉まんを奢ってもらった。
お店の前に2つ並んでた木の長椅子にみんなで座る。
橘くんは立ったままだけど、男子高校生4人が座るとさすがにぎゅうぎゅう。
私の場所を空けてくれた東先生の隣に座って、ちょっとの気まずさを感じながら肉まんを頬張る。

東先生は今日は仕事は無いはずなのに、スーツでバッチリ決まってる。(黒髪の人もスーツで、ネクタイが白いから結婚式とかだったのかも)
身長も高いしスタイルもいいから、羽織られた黒のコートが格好良さを一層引き立たせてるような気がする。
大人の男の人っていう感じがして、うん、ほんと格好良い。
こんな人が自分の学校の先生なんだから、ちょっと鼻が高い!



「あ、そーだ東先生オレたちのレアプリクラいります!?ケータイに貼っていつでもかわいいオレたちのことを見守っていてくださいっ」

「あはは、ありがとう」

「あーいいなーボクも貼るからちょうだいよー」

「やんねえよ何に貼るんだよお前は!」



人形か!?わら人形か!?って、ちょっと笑っちゃったけど、どうやら橘くんは東先生の友達に何故か敵意むき出し。



「むむむさんもいるっしょ!?」

「こらこら。他にあげる人がいないからって無理矢理押し付ちゃむむむさんが可哀想でしょ」

「いいじゃんいいじゃん!せっかくなんだからどっかに貼っといてよ!」



ニカッと余りにも眩しい笑顔で差し出してくれるから、有り難く受け取った。
仲良く5人で映った姿が微笑ましくて、ほんとにレアだなぁって思って大切に財布に閉まっておいた。



「そういえばあきらさんはなんのお仕事されてるんですか?」

「サンタクロースでーす!」

「どこの世界に真っ赤な服着た腹ん中真っ黒なサンタがいんだよ」



…ああ橘くんって、実は私のすごく好きな感じの子かもしれない。
こういうノリは大好き。



「むむむのそれってもしかしなくても?」

「うん、クリスマスケーキだよ」

「うっわぁいいなー!」

「…こんなところでゆっくりしてて大丈夫なの?」

「……うーん…そろそろ帰った方がいいのかも…」



東先生が時計を見せてくれて、もう結構時間が経っててびっくりした。
東先生に肉まんのお礼をして、あきらさんと呼ばれてお兄さんも笑顔で小さく手を振ってくれる。
祐希くんや塚原くんにもじゃあね…ってその前に。



「そうだこれ、よかったらみんなで食べて」

「…あ?でもこれ……」

「これオマケでもらったやつだから気にしないで」

「さすがむむむさん」

「さすが」

「うわあ!美味しそうなマドレーヌです!」

「うおー!まじでっ!?」



思った以上に喜んでくれる皆に、嬉しいのと照れ臭い気持ちが胸を高鳴らせて、足早にその場を離れた。
今日はいい日だなぁって思いながら帰ると「何だかご機嫌ね」ってお母さんが笑いながら言った。


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