文化祭が終わった。
今は後夜祭と称してみんなでワイワイと騒いでいる最中。
もう薄暗い校庭は、火が燃え上がった明かりで不自然なほど赤く、そして温かかった。
キャンプファイヤーではなく、こういう文化祭とかでやるのはボーンファイヤーっていうらしい。
カレーを食べたりとかそんなんじゃないけど、ただ何となくわいわいするだけ。
「つっかれたー」
「お疲れさま。でも岬ちゃんたちのお陰でお店は大繁盛だったね」
「ほとんど浅羽でしょ。あとは松岡も可愛いって人気だったし」
私何もしてないでしょって笑うけど、岬ちゃんだって凄く人気だった。
おかげで売り上げはかなり良かったみたいで、近々盛大に打ち上げしようって話もあるらしい。
用意してた飲み物と食べ物もほとんど無くなって、予想以上の売り上げに先生でさえびっくりしてたくらい。
「写真とか撮っとけば売れたんだろうなー。勿体ない事したかも…」
「写真部の人たちにはいっぱい撮られてたみたいだけど…」
「むーは撮った?写真」
ううん、と首を横に振ると、岬ちゃんは「まぁそうだろうなとは思ってたけど」って苦笑い。
本当は撮りたかったんだけど、悠太くんいつも誰かにお願いされてたからなんか申し訳なくて行けなかった。
ちょっと残念だったけど、松岡くんと岬ちゃんとは撮れたからいいかなって。
…やっぱり残念だけど。
「遠慮なんかしてるからだよ」
「でもずっと囲まれてたし働きっぱなしだったから、疲れてたみたいだし」
「まぁ…そういや今もいないし」
パッと校舎の方を見上げると、ほとんど真っ暗だけど3つくらい電気の付いた教室が見える。
その中のひとつ、私たちに手を振ってくれる男の子と、その隣に女の子。
あれは松岡くんと茉咲ちゃんだ。
岬ちゃんは大きく手を振り、私も小さく振り返す。
「あいつらも来ればいいのに」
「ね。楽しい…のかは分かんないけど」
「気持ちの問題でしょこんなの」
火を囲みながら話したり騒いだり、それだけで十分に楽しいと思える。
「……むー」
「ん?なに?」
「松岡んとこ見てみて」
「………あ、」
さっきまで松岡くんと茉咲ちゃんがいた場所に、今度は悠太くんと祐希くんと橘君が見えた。
橘君は大きく手を振り、祐希くんと悠太くんも軽く手を振ってくれる。
たったそれだけのことが特別に感じられてしまう。
仲良くなれてきてるって事なのかな、と、それが嬉しくて胸がドキドキした。
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