1つの島を抜けて、船は海上をユラユラ揺れながらゆっくりと前に進む。
ゾロはどこかで寝ているだろうし、ウソップとルフィとチョッパーは外で騒いでいるのだろう、賑やかな声が聞こえてくる。
私とナミとロビンはサンジの作ったポテトパイと特製のジュースを飲みながら何でもない話をする。
私の住んでた世界の話になると、サンジもナミも、特にロビンは興味深げに質問の答えに耳を傾けている。


「へェ…そんな世界があるんだなァ」

「興味深いわね。一度そっちの世界にも行ってみたいわ」


そんな話をしていた時、賑やかだった3人の声がピタリと止む。
何かあったのかしら、とナミが覗きに行くと「何これ!?」とそんな声が聞こえてくる。
サンジとロビンと顔を見合わせて、私たちも外に出る。
見えてきたソレは、空まで届くんじゃないだろうかってくらいに大きな洞窟。
あんぐりと口を開けたまま見上げる。


「こんな大きな洞窟があったなんて…」

「入ってくださいと言わんばかりの入り口だなこりゃ」


私たちと同じように見上げるルフィの表情がキラキラと輝きに満ちていく。
皆が同じ予感を胸にしているに違いない。


「……よし!行こう!サンジ!飯を準備してくれ!!」


あぁやっぱり。
はいよ、とキッチンに向かうサンジと、ナミもロビンもどこか楽しげに洞窟を見上げている。
チョッパーはいざと言うときの薬や医療道具を準備し、ウソップも何かを探しに駆け出していった。
騒がしさに起きてきたゾロは大きな欠伸を1つ浮かべ、目の前の巨大な洞窟に目を向けていた。
なんだこりゃ…と見上げながら錨を下ろす準備をし始める。


「それにしてもデケェ」

「海獣とかうようよしてそうだ…」

「ウソップ様に任せときゃそんなもんイチコロだぜ!」

「ほっ、ほんとか!?」


近付けば近付くほど、その威圧感と存在感に皆の言葉が少なくなっていく。
それでも船は吸い込まれるように、入り口から中に入った。
その瞬間辺りが暗くなり、不気味なほど静かな洞窟をゆらりゆらりと進む。
しばらく進むが、相変わらず何の音もせず海獣さえも出てこない。
まるで夜の海を航海しているようなそんな錯覚に陥ってしまいそうになった。


「なんっ…にもないわね」

「蛇やサメの一匹でも出てくりゃいいものを…」

「おーい!何かいねェのかー!!」


ルフィの声が響き渡る。
が、その声も直ぐに消えてしまう。


「時間の無駄かしらね…」

「ただのトンネルか?」

「……いや、向こうに岸が見える」


ゾロが指した場所で、水は行き止まりだった。
船を寄せて、みんなでゴツゴツした石の地面に降り立つ。
しばらく道なりに歩いていくと、マンガでよく見るような見事なまでの分かれ道に辿り着いた。
3つの分かれ道と、このまま真っ直ぐ続く1つの道の計4つの道。


「どうすっか…」

「4組に分かれて行くのが一番いいでしょうね」

「そうだな…」

「冒険らしくなってきたなァ!」


ジャンケンで決めた4組。
ウソップとナミ、ルフィとロビン、ゾロとチョッパー、それから私とサンジ。


「行くか」


サンジの声に導かれ、私たちは3つに分かれた一番右の道を進むことになった。


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