「ゔわ゙あああああああ!!!!やめろ〜!!!!」



突然現れた人は、引き連れている巨大な鳥と共に船を、燃やし、破壊していく。チョッパーの悲惨な叫び声が響き渡り、私は隠れながら震える自分を抱き締める。危ないから隠れていろ、そう言ってくれたのはチョッパーで。
彼は今、勇敢に闘っている。なのに私は、隠れて自分を守っている、だけ。燃えていく、壊されていく船を、傷付いていくチョッパーを、見ているだけ。



「ウワァアアア〜ッ!!!」



チョッパーの叫び声が耳に入る度に、身体は余計に震え、私は恐怖に支配されてゆく。揺れる船、飛び散ってくる火の粉や木屑。



「…も゙うやめてくれ!!!おれは…ふ…!!船番なんだ……!!!この船をよろしくと言われてるんだ…!!!……ハァハァ……ハァ…!!!」



必死で船を守ろうとしているチョッパーの声。ぎゅうっと縮こまるように洋服を握り締め、これ以上ないってくらいに心臓が脈打つ。



「そんなに生きたきゃなぜ弱いっ!!!!」



凄まじい音に身体がビクッとなる。それはきっと船に突き刺さったのだろう。そしてまた船が燃える音。
直後にまたチョッパーの声が聞えてきて、怖い、早く終われ…そう思うと同時に沸き上がってくる罪悪感。彼がこんなに頑張っているのに私1人が隠れて身を守ってる。船番を任されたのはチョッパーだけじゃなくて私もなのに…って、何も出来ない自分が嫌いで悔しくて、ツンとした感情があふれ出そうになる。



「誰かが逃げた罪は誰かが死んで詫びろ。“犠牲”という名のこの世の心理だ。……また帰って来るとすればなおの事…己の過ちをより深く知る為に」

「…いっ、」

「お前の命を“神”に差し出せ!!!」

「いやだァ〜!!!!」



ドスッ、聞えてきた嫌な音に鳥肌が立つ。沸き上がってくる恐怖心が不安を掻き立て、更に速まる心臓が嫌な予感をより大きなものに変えていく。勇気を振り絞って振り向くと、組み敷かれたチョッパーに向けて槍を振り上げているその姿が見えて、



「…やっ、」

「アアアアア〜ッ!!!」

「………やめて、っ…!!!」



精一杯の声を絞りだして、そう叫んでいた。立ち上がり向き直った自分の身体はガタガタと震えていて、格好悪いなんてそんな事よりも“助けなきゃ”って、ただそれを思うだけ。
2人の視線が私を捕える。



「むーっ…だめだ隠れてろ…!!!」

「ほう…」



怖くて、私の目から溜まっていたものがボタボタッと船に落ちる。振り上げていた手を一端緩めると、それを見たチョッパーは逃げ出そうと藻掻きだす。そんなチョッパーの腹部をおもいっきり踏みつけ、ゔうっ…と唸るチョッパーから身体を離して立ち上がった。
無表情で私に向き直ると、じっと私を見つめる。怖い。だけど負けちゃいけないって、唇を噛み締めながらぎゅうっと拳を握る。精一杯の強がりだった。



「ならばお前が死んで詫びよ」



振り上げられた槍は、何の躊躇いもなく振りかぶられ、それは私に向かって飛んでくる。怖くて動けなかった。



「や、っ…や゙めろォォオオ゙オ゙ッッ……!!!」



チョッパーの声が頭に響いた。もうダメなんだ死んじゃうんだってそう思うとまた涙が零れてゆく。ぎゅうっと目を瞑り、怖いながらに“死”を覚悟した。
本当はほんの一瞬だったけど、楽しかった記憶が長い長い時間をかけて頭の中を廻っていった気がした。
ドスッと聞こえた音に感じた痛み。いたいいたい痛い痛い痛い痛い、痛い、だけど、――だけど死んでない。
二度目に聞こえたその音に目を開ければ、



「少々待たせた…すまない」



そこには空の騎士がいた。


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