ウェイバーっていう乗り物は、乗りこなすには相当な時間がかかるものらしい。だけどナミはすいすいと、まるで自分の体の一部かのように見事に乗りこなしている。乗りたいか?とゾロに聞かれたけど、私には絶対無理だから首を横に振る。彼もきっとそれを分かってて聞いてきたんだとおもう。何げに意地悪だ。



「先行ってて!!おじさんもう少し遊んでていい!?」

「ええどうぞ気をつけて下さい!!」



相当楽しんでいるのか、ナミはもう少し遊んでいくとウェイバーを乗り回している。楽しそう。だけどやっぱり私には無理だろうから、ちょっと名残惜しい気持ちはあったけど目の前の長い長い階段を皆と一緒にゆっくり登る。先を見れども階段で、私ここ登り切れるのかなっていう不安が頭を掠めた。実際、まだ半分くらいしか登ってないのにもうすでに息苦しい。



「大丈夫か?」

「ん……なんとか…」

「空気が薄いっつってたからな。無理すんなよ」



…何だろう、何だかゾロが凄く優しい。いつも優しかったけど、なんかいつも以上に私を気にしてくれているような気がする。ゆっくりなペースの私に合わせてくれてて、申し訳ないと思いつつその優しさに甘えてしまう。置いていかれるのも悲しいだろうし。



「大丈夫か?」

「あ、はは…なんとか…」

「もうちょっとだ、ホラ」

「ありがとう、」



前を歩いてたサンジが振り返り、ゆっくり私に手を伸ばしてくれていた。その手を取ると彼はグイッと引っ張ってくれて、もう足も限界に近い私にとっては凄く有難い行為だった。
階段を登り切ると、下に見える景色は絶景だった。やっぱり真っ白だけど、こんな景色を見たことはなくて。ときめく胸を抑えながらその景色を焼き付けて、招待されたコニスさんたちの家にお邪魔した。
雲で出来た椅子に座って疲れ切った身体を休めて、出してくれたミルクティーに口をつけた。



「ウソップのアホー!!!」



ルフィたちはダイアルで遊んでいる。ウェイバーを動かしているダイアルとは少し違うらしく、今彼らが遊んでいるのは“トーンダイアル”といって、音の録音が出来るものらしい。ウェイバーを動かしているのは“ブレスダイアル”というもので、風に当てておいた分だけ風が使えるっていう感じなのだと言っていた。



「どーだ!」

「…!」



ぶあっ、と貝を向けられたかと思えば、その風が私の顔面を吹く。向かい側にはニシシと笑うルフィがいて、私もつられて笑ってしまった。なんだか中学生にでもなった気分。



「うめ〜!!!このエビ!!何て表現したらいいんだ!!?」

「おい!!ナミさんはどこ行ったんだ!?」

「いるだろ海に………」



サンジたちが作ってくれた空島料理を食べていると、外を見渡していたサンジがナミがいない事に気付いたらしい。するとコニスさんたちが急に顔を青ざめさせた。



「この“スカイピア”には何があっても絶対に足を踏み入れてはならない場所があるんです。その土地はこの島と隣接しているので“ウェイバー”だとすぐに行けてしまう場所で……」



皆の箸が止まって、コニスさんの話に耳を傾ける。その表情を見ているだけでも私の胸は不安に覆われていく。



「足を踏み入れちゃならないって何だそれ?」

「…………聖域です。神の住む土地…“アッパーヤード”」



神の住む土地、だなんて。ここが空なんだって事を改めて感じる。胸中を覆い尽くす不安が間違いであれば良いのにと、そんな小さな期待は無惨に崩れ去る。


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