空には本当に島があった。
それが私の感想。漠然としているけれど、ときめきも感動も全部含まれてる、私にとっては一番適切な言葉だと思う。
「うほー!!!この島、地面がフカフカ雲だ!!!」
「ギャ〜!!!空島〜!!!」
まだちゃんと船は停まっていないけど、待ちきれなかったらしいルフィとウソップとチョッパーは船を飛び出していった。だけど、ウキウキしているのは彼らだけじゃない。サンジもズボンの裾を捲って浮かれた様子で飛び込んでいったし、ナミなんていつの間にか水着姿になっている。下は膝丈のズボンを履いてるけど、そのスタイルの良さはいつ見たって羨ましい限り。
「…ねぇ“スカイピア”って…」
「ええ…ルフィの見つけた地図にあった名前よ!空から降ってきたあのガレオン船は200年も前に本当にここに来てたのね」
ナミの手には、あの時ルフィが見付けた地図が持たれている。スカイピアと掛かれた地図は、偽物なんかじゃなかったって事。
「あの時は正直こんな空の世界想像もつかなかったけど………ほら!!…ハハ、体感しちゃったもの!!疑いようがないわ!!」
船から飛び降り雲に飛び込む。ズボッとハマったまま嬉しそうに笑い声を上げ、ルフィやサンジ達の所まで元気に走っていった。
「………あなた達は?」
「……………?ああ行くよ。むーも行くだろ?」
「うん行ってみたい」
船に残っているのは私とロビンとゾロの3人だけ。不思議な気分。ゾロとロビンは仲が悪いわけじゃないけど、良いわけでもないように見える。居心地が悪いわけじゃないけど…うん、本当に不思議な空気。
「航海や上陸が……冒険だなんて考えた事なかった」
ふとロビンが呟いた言葉が耳に入った。深い部分は分からなかったけれど、彼女なりに何か感じているんだろう。
私にとっての冒険といえば、まさに今まで私たちが経験してきた事そのものだと思う。知らない場所で色んな経験をする、それがきっと冒険なんだろう。
ロビンも船を下り、ゾロもズボンの裾を捲っている。「お前もやっとけ、濡れるぞ」との彼の忠告を素直に受けて、私も履いていたズボンの裾を捲り上げた。
「飛び込んでこい」
ゾロが飛び降りて、私を呼ぶ。船から随分下に見えるからちょっと怖いっていう気持ちもあるけれど、ゾロが私を見上げて待ってくれるから覚悟を決める。
飛び降りるとまた雲の不思議な感覚が身体を包み込んだ。ズボッとハマった身体を引っ張り上げてもらって、足首の上くらいまである水の中を歩いた。
「…ちゃんと歩けねェのかオメェは」
「え、だってなんか、ふにゃふにゃしてて歩きにくくない……っわ、」
「あぶねェ奴だな…」
「…ご、ごめん……」
「いいよ掴んでろ、そうでもしねェとお前どっかでスッ転びそうだからな」
よろめく私が咄嗟に掴んだのは、ガッシリとしたゾロの腕。彼はしがみ付く私を横目で見て小さく、鼻で笑った。
「私も筋トレしようかな…」
「…まァ、した方がいいかもな」
初めて触れる彼の腕は見た目以上に筋肉質で、腕を組むように歩いているはずなのに安定感はなかなか得られない。私はこの時ほど、自分の運動神経を疑ったことはきっとないだろう。
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