真っ白な世界をメリー号は進んでいく。それにしても、なんて静かなんだろうか。船が進む小さな音が耳に入ってくるだけで、他は私たちの話し声しか聞こえてこない。



「なァあそこ見てくれ!」

「?…何かしら…滝のようにも見えるけど」

「変な雲だろ?」



進む先には、まるで流れるような不思議な雲が見える。何もないし何もわからない、だから取り敢えずそこに向かおうという事になった。



「…その前にでっかい雲……」

「どうする?」

「“空の海”の上に浮いてんだから同じ“空の海”じゃねェだろ」

「……じゃどんな雲だ………?」

「ただの雲ならそのまま進むんだけど」

「触ったらわかるだろ」



滝の前に着くと大きな雲が現れる。見た感じだと普通の雲にしか見えないけど、ルフィが腕を伸ばして触ると、吸い込まれるわけでもなくその雲はルフィの腕を弾いていた。そしてルフィが雲に飛び込んでいく。ウソップもチョッパーも同じようにダイブ。
楽しそう、私も乗ってみたい、っていうのが感想で、だけど何だか勇気が出ない。



「気持ち良いぞー!むーも来いよー!」

「…行きたいなら行って来ていいわよ?ルフィがいるから心配いらない……いや、アイツがいるから心配なのか…」



苦笑いを浮かべたナミがそう言って少し考える素振りを見せる。でもすぐに「まぁ大丈夫でしょ」と私の背中を軽く押してくれる。行ってらっしゃい、と言ってくれたロビンの方を見たとき、いつの間にか伸びてきていたルフィの腕によって身体が引っ張られていく。ルフィの満面の笑顔がすぐ目の前にある、かと思えばそのまま雲の上に落ちる身体。



「…っ、わ……ふかふか!」

「気持ち良いだろ!」



ししし、と笑うルフィがポヨンと跳ねながら私の周りをぐるぐる回る。雲の上は本当にふかふかで、何て表現すればいいかわからないけど、ふかふかだけど弾力は抜群で柔らかくて…やっぱり上手い表現が見付からない。だけど不思議な感覚で、昔からの小さいけど大きな夢が叶ったみたいな気がして胸の高鳴りが収まらない。



「ねェ!!上から船の通れるルートを探して!!」

「おう!!よし!!行くぞ!!」

「…ん……うん、」

「オイ!!ルフィあっち何かあるぜ」



ルフィに腕を引っ張られて雲の上を歩いて進む。だけど皆みたいに真っ直ぐ歩けなくて、ヨロヨロと歩いているとウソップが私を見てケラケラ笑う。危なっかしいなぁ、って、普通に歩ける皆が凄いんだと思うけど…。
右だ左だとメリー号を案内しながら、私たちは雲の上をひたすら歩く。ウソップもチョッパーも器用にクルクルと回ったりながら楽しそうにしている。私は相変わらず歩くのがやっとだけど、それでも楽しい。



「むーもやるか?」

「…?なにを………っ…!?」

「うひょー!!どーだ楽しいだろっ!!!」

「……っ…あはは、なん、か…不思議な気分、っ……わ…」



歩いていた私のお腹に突然ルフィの右腕が巻き付いてきて、そしてルフィと一緒に私の身体は中に浮いている。ぽよんぽよんと、跳ねている不思議な感覚にまた胸が弾む。一人じゃ怖いかもしれないけど、今はルフィが居てくれるから全然怖くも何ともない。



「コラ!遊んでないでちゃんと案内しなさい!!」

「ちょ…ルフィ!!お前、また羨ましい事してやがンのか!!」



何とかメリー号を案内しながら前に進んでいくと、さっき見えた滝が目の前に現れる。遊びは終わりってナミに言われて私たちは、名残惜しい気持ちが残ったまま船に戻った。


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