みんなと一緒に船に乗せてもらってる私が普段やってる事と言えば、何も思い浮かばない。
闘えないし医療知識もないし船に関しての知識もほぼ皆無。
それでも最初の頃に比べれば微々たるものだけど知識はついた。
と、思う。
それでも役たたずは役たたず。
何か出来ないかなって、思い浮かんだのはサンジの顔。


「ね、サンジ」

「んあ?…何だ?」



台所で野菜を裁いていた彼が振り返り、私を認識すると煙草を咥えた口元が弧を描いた。
料理教えてほしいんだけど、と相談をすると一瞬驚いた顔を見せたがすぐにさっき以上の笑顔を見せてくれる。


「どんくらい出来るンだ?」

「んん……結構、初心者…かな」


ごめんね、と付け足すと彼は全く気にしていない様子で「気にする事ねェよ」と呟いた。
実際、料理は今まであんまりしてこなかった。
家庭科の調理実習とか、時々お菓子を作ってみたり、あとは卵焼きとかほんとにそんなレベル。
でも感覚は別に普通だと思うし、そこまで不器用なわけでもないとは思う。
何か作っても食べられないような料理にはならないし、包丁だって危なっかしくない程度に握れる。


「じゃあそうだな、この大量のじゃがいもの皮剥きから」

「がんばります!」

「頼もしいぜ」


山のように詰まれた茶色のかたまりを一つずつ白く変えていく。
サンジはこれを一瞬で終わらせるけど、私はそれの何倍、何十倍の時間をかけて剥いていく。
迷惑かけちゃってるかなぁ、なんてサンジを確認するようにチラッ横目で見てみると、ご機嫌な様子で剥いたじゃがいもを刻んでいた。
それに気付いたらしい彼は、んん?と疑問の声を漏らす。


「そーいや何で急に料理しようと思ったんだ?」


器用に手元の包丁やら鍋やらを動かしながら私の方に視線を向けてくる。
どう答えようと一瞬で考えて、それを口にする。


「私みんなみたいに何も出来ないから、出来る事、ちょっとでも増えればいいなって…思って」


最後の一個を剥き終えサンジに渡すと、じゃがいもの山は見事になくなった。
隣では既にいい香りが漂い始めている。
いつの間にやってたんだろうと思っていると、彼は私の頭に大きな手を乗せた。


「レディにゃ甘ぇが料理となりゃあ話は別だ。それでもいいか?」


勿論!と笑ってみせれば彼もまた同じように笑ってくれた。
良かった彼はきっと本当に迷惑だと思っていないんだ、と確信したのはその時で。
みんなもサンジもびっくりさせるような料理が作れるようになればいいなって、そんな夢を見ながら今度は涙ながらに玉ねぎを刻んだ。


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