気付けば朝になっていた。ボロボロだったメリー号はバージョンアップし、立派に船は完成している。羽が生えて少し強そうになったメリー号のモデルは何故か鶏だったけど、確かに少し飛べそうな気もしてくる。



「朝よもう朝!!!約束の時間から46分オーバー!!海流に乗れなくなるわよ!?だいたい帰りは金塊持ってるんだから重くて遅くなるでしょ!?そういう計算できてないのよあいつの頭では!!」

「いや…最初っから時間の計算なんてしてねェと思うぞ」

「100%な」

「町でやられちゃったんじゃないかな…」

「負けたら時間に間に合っても許さないわ!!!」

「どうなんだよお前は」



船は完成したし皆の準備も出来ている。だけどまだ、ルフィが帰ってきていない。ナミは怒っているけど、それよりもきっと心配しているんだろう。ソワソワして落ち着かない様子でいる。だけどそれはナミだけじゃなくて皆同じ。ルフィが負けるとは思っていないけど、それでも無茶ばっかりのルフィが心配になるのは当然かもしれない。



「おーい!!」

「あいつだ………!!よかった帰って来た!!!」



森の方からルフィが元気良く走ってくる。キラキラした表情で、その姿には見える限りで怪我はしていないように見える。皆が安心したような表情を浮かべ、掲げられた右手が誇らしげで。



「やったぞ〜!!」

「ルフィ急げェ!!!出航時間過ぎてんぞ!!!」

「これ見ろ!!!ヘラクレス〜!!!」

「何しとったんじゃー!!!」



…本当に誇らしげ、だ。まさかカブトムシを持っているなんて誰が思っただろうか。本当に嬉しそうなルフィの表情に皆が呆れている。だけど、帰ってこないと心配してたことが馬鹿馬鹿しくなって思わず笑いが零れてしまう。
飛べそうになったメリー号を見たルフィは更に目をキラキラさせて「飛べそー!!!」だと声を洩らす。まるで子供のように純粋なルフィに、どれだけ救われているだろうか。何を悩んでいるんだろうと思ってしまう程、僅かだけど心に余裕が生まれる気がする。



「足元、気を付けろよ」



サンジにエスコートしてもらって早速船に乗り込み、あとはルフィを待つだけ。クリケットさんと何かを話したルフィが駆け寄ってきて、飛び乗ろうと手が伸びてくる。その手は私に向かってきているみたいで手を伸ばすと、彼の手がしっかりと私の手を掴んだ。引っ張られそうになるけどルフィがそのまま私に飛び込んでくる。ビックリして手を離そうとするが、握られた手は離れないままルフィに抱え込まれるような形になった。



「ルフィお前っ…なんて羨ましい事してンだてめェ!」

「むーを離しなさい!!!」

「しししっ、やだね!!」



ドキドキしているのは私だけなのたろうか。結局ナミに殴られルフィは渋々と言ったように私から手を離した。船は出航し、二つの船に守られるようにゆっくり前に進んでいく。


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