目の前にはいつものように筋トレをするゾロがいる。持たれているのはあり得ない大きさの鉄アレイっていうよりは重りで、一体何キロあるんだろうっていう疑問もちょっとだけ。
ゆっくり近付いていっても集中しているのか気付く様子はない。サンジが作ってくれたデザートを持ってきたのだが、話し掛けるのも何だか忍びない気分になってくる。後で良いか、と、取りあえずその場を離れようと足を動かす。


「…何だ?」

「あ。…サンジがね、デザート作ってくれたんだ」


ゴトンっと持っていた重りを床に置き、目を瞑って前を向いていたゾロが振り返って私を見ていた。気付いてくれたならいいか、とゾロに近付いてデザートを渡す。悪ィな、と食べ始める彼の隣に私もゆっくり腰を下ろした。


「なんだ?」

「や…すごいなぁって」

「こんなのまだまだだ。何ならむーも筋トレするか?」

「こんなの持てるわけ無いよ!」

「誰がこれ使えって言ったよ」


何処からか取り出してきたのは私でも持てそうなサイズの鉄アレイ。10kgと表記されているそれを私に差し出してくれて、それを手にして腕を上下にしてみる。片手ではなかなかしんどくて、結局は両手で持つ始末。自分の筋力の無さに何だか呆れるを通り越して笑えてくる。


「重いっ、」

「…マジで鍛えた方がいいんじゃねェか?」

「……だよね」


本気で心配されているのかもしれない。確かにここまで筋力が無いとなると、自分の頼りなさを痛感する。向こうの世界では支障の無かった筋力でも、こっちの世界じゃそうはいかないのかもしれない。確かに無駄な肉が多い。言ってみれば腕だけじゃなくて、お腹やお尻や足にも無駄な物が多すぎるような気がするんだけど。


「筋トレしようかな」

「そうした方がいい」

「ついでにダイエットも」


呆れたように笑いながら私を見るけど、自分にとってはいいチャンス。サンジが作ってくれる料理が美味しいから、いつもついつい食べ過ぎちゃって。体重こそ測ってないからわからないけど、何だかちょっと余計なものたちが身体についてるような気はしていた。


「また来てもいい?」

「…好きにしろ」


うん、いいチャンス。筋肉をつければ、微々たるものかもしれないけど、何もできない今よりも自分を信じられるかもしれない。それにダイエットにもなるなら一石二鳥。そのうちナミみたいな身体になればいいんだけど、と思うと余りに現実の自分と掛け離れていることに気付き、心の中で盛大に溜め息を吐いた。


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