ジャヤという島が目の前に見えてきた。山があって建物があって、港にもたくさん船が並んでいる。リゾートっぽい!とはしゃぐナミはいつもよりも楽しそうだ。
「しかし港に並んでる船が全部海賊船っぽく見えるのは気のせいか?」
「も…もーウソップったら!海賊船が港に堂々と並ぶわけないじゃない?」
「ハハハ!!だ…だよなー」
「殺しだァ!!!」
まだ上陸もしてないのに、誰かの不吉な叫び声が響いて聞こえる。リゾートっぽいなんて全然、遠目の感覚でしかなかったのだ。また怖い場所に来ちゃったんだなぁ…なんて、思わず小さなため息が漏れる。
港に船を停めてると、ルフィとゾロが町へと入っていく。ナミとウソップとチョッパーは隠れる様にしてその様子を覗いている。私はそんな3人の後ろ姿を眺める。
「……あの2人が騒動を起こさないわけがない!!」
「………まあ……ただでさえヤバそうな町だ…限りなく不可能に近いな…」
「それじゃダメなのよっ!!」
耐えきれない!とでもいうような形相でナミが飛び出していく。ルフィとゾロが騒ぎを起こさないワケがない、だから2人を止めに行ったんだろう。
後ろからサンジさんがタバコを蒸しながら歩いてきた。
「何だよナミさんが行くんならおれも行くぞ」
「お前は行くなァ!!!」
凄まじい勢いでサンジさんに飛び付くウソップとチョッパー。サンジさんの服をぎゅうっと掴んで、泣きながら「行かないで」と懇願している。
だけど確かに、サンジさんがいなくなるのはちょっと不安かもしれない。ウソップとチョッパーが戦えないわけではないけど、なんというか、頼り無いっていうか…失礼かもしれないけど、きっと誰かに襲われても一緒に恐がってるだけなんじゃないか、と。思う部分も、ある。
「お前まで行っちまったらこ…このこ……この船がもし…襲われれ…」
「行がな゙いでぐれよォ!!!」
「……ちょっ……離せ!!おれはナミさんのところに……っ!!!」
サンジさんも頑なに2人を引き剥がそうとしている。ナミさんを守るんだ!って、2人と一進一退のやり合い。
するとウソップが方向転換して、サンジさんから私の方に向き直る。びっくりして一歩引くと、肩をガシッと掴まれてガクガクと揺らされる。
「アイツを止められるのは…お前しかいない…!おれらの命はむーにかかってんだ…!!」
「…え、あ、」
「頼むよォ〜!!!」
「わ…わ、かった、から…」
「なーにやってンだオメェは!」
ガクガクと身体を揺らすウソップを止めるように、サンジさんが割って入ってきた。サンジ〜!!と、ウソップも必死らしい。
「むーちゃんが居てほしいってェんなら、」
「居てほしい!!」
「オメェじゃねェよ!!」
ウソップはめげない。
だけど私もウソップとチョッパーと一緒。サンジさんが居てくれるなら、それこそ安心してお茶でも飲んでいられるだろう。
「…ナミ、心配なんでしょ?」
「まァ、心配だよなァ」
行きたいんだろうか。サンジさんの口元はタバコを挟む手で隠れているから、表情は読めない。私だってナミは心配。
…だけど……やっぱり。
「……居てほしい………です…」
自分も大事だから。ナミはきっと、ルフィとゾロが守ってくれるはず。わがままかもしれないし自分勝手かもしれないけど、でもやっぱり、居てくれたほうが心強い。
軽く私の頭に手を乗せると、口元から手が離れて彼の表情が見える。
「心配しなくても守ってやるさ」
なんて心強いのだろうか。笑顔を浮かべたままのサンジさんが「お茶淹れるから中に入れ」と、もう一度軽く私の頭を撫でた。
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