ジャヤに向けて船はゆっくりのんびりと前に進む。チョッパーと並ぶように腰掛けて日向ぼっこ。たこ焼きを食べてお腹いっぱいで、おまけに天気が良いからぽっかぽか。こんな中で船に揺られていると眠気だって襲ってくる。
「ぽかぽかだね」
「ジャヤはきっと“春島”だな」
「春島かぁ。いいね」
「むーが住んでたところも春とか、あったのか?…ウソップに聞いたんだ、むーが“この世界”の人じゃないって」
ほんのちょっと、焦ったような様子を見せた。チョッパーなりに気をつかってくれているんだと思う。ただ私は気になんかしていなくて、チョッパーとは反対にニッコリ笑ってみせると彼も安心したように笑ってくれた。
「うん、あったよ勿論。春になったら道とか公園とか、色んな場所に桜がいっぱい咲いてた」
「桜…」
「皆にも見せたいくらい綺麗な景色。桜はね、私のいた国を象徴する花にもなってたんだよ」
「いい所に住んでたんだな、むーは。…俺もいつかその景色、見てみたい!」
また可愛らしい笑顔を浮かべたチョッパーが、私から視線を外して真っ青な空を見上げた。空にはカモメも飛んでいる。こんな景色、あっちにいた頃にはきっと見ることはできなかったんじゃないかと思う。
「春はいい気候だな。カモメも気持ちよさそうだ」
「ほんとだ……………ね………」
ボトボトッ、と。さっきまで私とチョッパーが眺めていたはずのカモメが船の上に落ちてきた。ありえない事なのに、やっぱりここではそんなの通用しない。
「っあああああ!!!撃たれた〜!!!」
「お!焼き鳥しようぜ!!」
チョッパーの叫びと呑気なルフィの言葉が耳に入ってくる。ぐでっとしたカモメからは血も滲んでいて、一羽だけが辛うじてピクピク動いている。あとの二羽は、きっともう死んでる。
「まだ見えてもいない島から狙撃を?チョッパーそれは無理よ」
「ハハ…そりゃどんな“視力”でどんな“銃”でどんな“腕前”の狙撃手だよ。どっかで打たれて偶然今落ちたのさ」
ナミの言葉に付け足すようにウソップが言った。狙撃手であるウソップが言うんだから間違いはないだろう。チョッパーはまだどこか不服そうだったけれど、サンジさんが持ってきてくれた焼き鳥を食べながらじっと空を眺めていた。
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