じっと見ているとまた彼女と目が合う。逸らそうにも逸らせないような視線に戸惑っていると、クスッと緩い笑顔を浮かべた。
「貴女はどうしてこの船に?」
「…何だっていいだろ」
「随分体調を崩していたようだけど…まだ油断しない方がいいんじゃないかしら」
「……何か知ってんのか?」
ゾロさんの問い掛けに「そのうちね」と笑顔を張り付けて答える。……私の事も、私に起きた事についても何か知っているのだろうか。
「航海士さんところで…“記録”は大丈夫?」
「西北西にまっすぐ!平気よロビン姉さん!」
不思議な、どこか掴めない人。すっかり船に馴染んだ彼女を見ていると、何だか胸が苦しく感じるのはどうしてだろうか。
パラパラと何かが降ってくる事に気付いたのは私だけではないらしい。コツ、と船に当たって音を立てるそれは雨や雪ではない。上を見上げるのはごく自然な行動だったと思う。
「空から」
「ガレオン船……!!?」
ただ一つ自然でなかったことは、空から降ってきたものが雨や雪といったような自然現象のものではなく、“船”だったということ。
船が海に落ちた衝撃で船は激しく揺れる。
「捕まれ!!!船にしがみつけ!!!」
サンジさんの声が聞こえてすぐに掴もうとしたものの、私の手が掴むのはいつも空気だけ。よろめき、投げ出されそうになる身体は私にはもうどうしようもない。身体が浮く感覚に何も考えられなくなっていた。だけど何かに、ガッチリと腕を捕まれる。目をやるとそれは船から生えた腕だった。これは彼女の能力で、彼女は今、私を助けてくれたのだ。
「何で…空から船が降って来るんだ…!?」
「奇っ怪だな…!!」
「空にゃ何もねェぞ…」
「あ!!!…“記録指針”が……!!!壊れちゃった!!上を向いて動かない…!!!」
ナミの焦った声が聞こえた。ナミが焦るなんてきっと相当なこと。それでも冷静な“彼女”が、ゆっくりと言葉を続ける。
「……違うわ…より強い磁力をもつ島によって新しい“記録”にかきかえられたのよ…………!!…指針が上を向いているなら
―“空島”に“記録”を奪われたという事…!!!」
“空島”という言葉に皆の動きが止まる。
きっと私だけではないはず。その響きにまた、新しい冒険の予感がしていた。
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