最近見る夢はずっと同じ。真っ暗な中にポツンと私がいる。近づく事も遠ざかる事もない“こっちの”彼らと“あっち”の家族や友達が、ただこっちを見て立っているだけ。ただ違うのは、少しずつ“あっち”の皆の姿が薄くなっていくこと。



「お、っ……悪ィ起こした…」



身体に感じた振動で、そんな夢から目を覚ました。目の前ではベッドから上半身を起こしたゾロさんが頭を掻いていて、奥にはスーツに着替えたサンジさんと、眩しい笑顔を浮かべたナミと、薬を持ったチョッパーと、ご飯を食べてるウソップがいた。皆の動きが一瞬止まり、すぐに私の名前を呼んでくれる。



「……なっ、」

「むーちゃんっ…!!!」

「むー…」

「ど、どっか痛いのか!?」

「おいおいどうしたー!」



何だかわからない。皆が無事だっていうことも知ってた。だけど皆がそこにいて確かに私の名前を呼んでくれた事に、ホッとして胸がいっぱいになってた。
ぼろぼろ、涙が止まらない。
皆が私の周りに来てくれると、ナミがそっと私の頭を撫でてくれる。それから「大丈夫だから」と優しい声で言ってくれた。



「ちょっとの事じゃ俺らは死んだりしねェよ」

「そうよ、みんな“普通”じゃないんだもん。それよりむーの方が心配だったんだから!だけど顔色も良くなったみたいだし…よかった」



みんなの優しさに涙はどんどん溢れてくる。ビビさんがタオルを持ってきてくれてそれに顔を押しつけて、そんな優しさにただ甘えるだけだった。本当に心配するべきはずの自分の事よりも、私の事を考えてくれるなんて、これ以上の幸せはないんじゃないかと思った。



「むーちゃん、ちょっとくらいそこ離れてもいいんだぜ?」

「ううん…ルフィが起きるまでここにいる」

「幸せなヤツだなこいつは」



皆は目を覚ましてどんどん快方に向かっていく。なのに未だルフィは目を覚まさない。戦いが終わってからもう三日が経っているというのに。
ルフィの寝ているベッドの傍に置いた椅子に座って私はじっとその寝顔を眺める。彼の麦わら帽子は私の膝の上。今はただ目を覚ますのを、皆がずっと待っている。
すると彼のくりっとした大きな瞳が、パチッと開く。



「いやーっ!!!よく寝た〜っ!!!!あっ!!!帽子は!!?帽子!!!ハラ減ったァ!!!朝メシと帽子は!!?」

「起きて早々うるせェなァてめェは………それに朝メシじゃねェ今は夕方だ」

「帽子ならむーが持ってる。ずっとそこでお前が起きるの待ってたんだからな!」

「おおよかった!!…そうなのか?」



視線が私に向いてニカッと笑って「ありがとう!」とそうやって言ってくれる。麦わら帽子を差し出すと、ばすっとそれを頭に被った。ああルフィだ、なんて当然の事をどうしようもなく嬉しく思った。
麦わら海賊団の皆がようやく顔を会わせる。やっと、揃った。ご飯だと案内された場所には沢山の人が居て、椅子に座ると直ぐに沢山の料理が運ばれてくる。食欲を掻き立てられるいい匂いが部屋いっぱいに広がっている。
いつの間にか食事は宴に変わり、皆が笑い、笑い泣き、少し前までのこの国の暗い雰囲気は微塵もない。



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