船の上では宴が始まる。お酒が飲めない私にはサンジさんが特製ドリンクを作って渡してくれてそれを飲んでいる。ホットにしてくれたのは彼の優しさだろう。
「えーここでおれ達の新しい仲間」
「カルーあなた飲み過ぎよ!!」
「クエーッ!!」
「オイクソコックもっとつまみ持って来い」
「おォ!!?今何つった!?おれをアゴで使おうとはいい度胸だ!」
「“船医”トニートニー・チョッパーの乗船を祝し」
「サンジ恐竜の肉もうねェのか!!?いっぱい積んだだろ!?」
「あーあらためて乾盃をしたいと思う!!」
賑やかな騒ぎに揺れる船。最近見なかったこんなばか騒ぎが、こんなにも楽しくて仕方ないなんて。
向かい側に並んで座ってるナミとルフィの笑顔が私の目に留まる。
「新しい仲間に!!!乾盃だァア!!!!」
『カンパーイ!!!』
なんて幸せなんだろうと思った。何故だかわからないけれど胸がいっぱいになった。こんなに深い幸せ、向こうに居たときに感じた事はあっただろうか。――そう思った一瞬、また何だか解らない眩暈と猛烈な吐き気が私を襲う。そっと立ち上がりトイレに向かう。…本当に最近、どうしたんだろうか。
戻すだけ戻し、気持ち悪さに襲われながらトイレから出るとそこには腕を組んだゾロさんが立っていた。
「…お前本当に大丈夫か?」
「……うん、平気」
「平気って…ンなわけねェだろそんな顔色しやがって」
ゾロさんは私の腕を引き、ずっとナミが使っていたベッドに今度は私を押し込めた。我慢してても仕方ない、そう観念した私は大人しくベッドに横たわる。
「いつから調子悪いんだ」
「…ちょっと前から」
「ナミと同じ頃か?」
「……もう、少しだけ前から」
「はぁ…だったら何でその時言わねェんだよ」
ジャングルに行った頃からだっただろうか。眩暈や立ちくらみなんてあっちにいた頃の私にはまるで無縁のものだったから、ただの疲労だと思って気にも留めていなかった。だけどここ最近はそういうのが本当に酷くて、やっとオカシイと気付き始めた。…結構鈍いなぁ私。
「…おい、!」
そんなゾロさんの声を最後に、重たい目蓋が閉じ切った。話しながら襲ってきていた睡魔に勝てなかったのだ。これ自体がもうオカシイんだって、私どうしちゃったんだろうって、そんな漠然とした不安だけがモヤモヤと私の胸を覆い始めていた。
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