またしばらくジャングルの中を歩く。遠くの方から何か物音がしてそっちに向かって歩く。もし虎だったら…なんて、サンジさんがいる限りそんな心配はいらない。



「……あ、」

「っはーっ!!!ナミさ〜ん!!ビビちゃ〜ん!!!…あとオマケども!!」

「よーサンジ!!むー!!!」



2人を見た瞬間、彼のテンションは急上昇。ハートを撒き散らしながら跳ねるように皆の場所に駆けていく。
私の目にはウソップが目に入って、何だか傷だらけだったけど無事みたいで凄くホッとした。ナミもビビさんもルフィもゾロさんもカルーも、皆がここに揃っている。後ろには巨人が二人居る。ナミとウソップを連れていった巨人もどっしりと座っていた。怖いっていう気持ちもあったけれど、皆の様子を見る限り敵ではなさそうだ。
サンジさんが皆に、さっきあったことを話し出す。電話で話したこととかそんなこと。彼が何処からか方位磁石のようなものを取り出すと、皆はあんぐりと口を開けて驚きを露にしていた。



「アラバスタへの“永久指針”だァ!!!」

「やったーっ!!」

「出航できるぞォっ!!!」



喜びのあまり抱き付くビビさんに、抑えきれないくらいの喜びとハートマークを浮かべるのはやっぱりサンジさんらしい。



「じゃあ丸いおっさんに巨人のおっさん!!おれ達行くよっ!!!」



ルフィの一言でこの場からの別れを、巨人の二人に告げる。何があったかは知らないけど、きっと凄く素敵な人たちだったんだろうと思う。
船に戻り皆がぼろぼろの服から着替えると、早速出航の準備。ゾロさんとサンジさんが獲ってきた恐竜みたいな動物の肉を乗るだけ船に積むと、間もなく船は動き出した。
ジャングルの中を抜けるように真っ直ぐ進む船。



「お!!あれおっさん達だ」

「見送りに来てくれたんだな」



船を挟むように、さっきの二人の巨人がマントをなびかせながら背中を向けて立っていた。



「この島に来たチビ人間達が…」

「次の島へ辿り着けぬ最大の理由がこの先にある」



重たい声が響く。



「お前らは決死で我らの誇りを守ってくれた」

「ならば我とて…いかなる敵があろうとも」

「友の海賊旗は決して折らせぬ……!!!」

「我らを信じてまっすぐ進め!!!たとえ何が起ころうともまっすぐにだ!!!」

「…………わかった!!!まっすぐ進む!!!」



思わず息を呑んでしまう程の重たい、重たい巨人の声が空に響く。それに応えるルフィの声も負けじと響いている。
異様な空気に包まれる船の上。…ああ、どうしようもう、ちょっと、怖いんだけど、なんてギュッと服の裾を握り締める。自分の眉間にシワが寄るのが分かった。そして海から得体の知れない大きな、巨人よりもずっとずっと大きな大きな魚が現れる。グラリと揺れる船の上で、よろめいた私をサンジさんがそっと支えてくれた。



「出たか“島食い”」

「道は開けてもらうぞ、エルバフの名にかけて!!!」



魚の全身が現れて自分の身体が強ばるのがわかった。この船は口を開けて待っているソレに向かっている。焦ったナミの荒んだ声が船に響く。ウソップは震えている。だけどルフィは「真っ直ぐ進む」そう言って聞かない。
まっすぐ、まっすぐ。
大きく開いた口に向かって行く。食べられる。みんな焦ってる、だけど私の中では何だか現実味がなくて逆に冷静な自分がいる。
一瞬で真っ暗になる視界。だけど船はどこまでも、まっすぐに進む。



「“覇国”っ!!!!」



突然の凄まじい振動と衝撃と一緒に真っ暗だった視界が一瞬で明るくなった。宙を舞う船。不思議な感覚で、浮きそうになる身体を引っ張ってくれているのはやっぱり傍にいたサンジさんだった。



「ふり返るなよ!!いくぞまっすぐーっ!!!」



ザバァン、と海に落ちる船。



「さァ行けェ!!!!」



誇らしげな巨人の笑い声が、空中に響く。皆の笑い声も同じように、大空に響き続けた。


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -