しばらく2人で紅茶を啜る。椅子は固くて、触ると何だかサラサラしたような感じ。例えてみるならばまるで“ろうそく”なんかのようなそんな感じだろうか。



「…今は紅茶なんておしゃれに飲んでる場合なのか!?どう思う?むーちゃん」

「……飲んでる場合じゃない、と思います」

「だよなァ…いやまいったぜ。だいたい何で密林にこんなくつろぎ空間があんだよ」



行くか、と立ち上がったサンジさんに慌てて私も紅茶を置いて立ち上がる。部屋を出ようと扉を開けると、どこからか電話の鳴るような音が聞こえてくる。私とサンジさんが同時に音のする方を振り返ると、そこには一つの籠が置いてあった。
サンジさんは躊躇いなくその籠を開けると中から大きなカタツムリが出てくる。



「電伝虫じゃねェか………!!」

「電伝虫…?」



殻からなにかを外すとサンジさんは誰かと話し始めた。こっちでいう電話なのだろう。よく見ると殻の渦のところにはダイヤルのような物もついている。しかも瞬きをしたりする所を見るとどうやらカタツムリは生きているらしく、一体どうなっているんだろうっていう疑問が真っ先に浮かんだ。電波なんて受信出来るのだろうか。
サンジさんは向こう側の人と何かを話し始めた。私はただそれを眺めているだけだけれど。



「…サンジさん」

「ん?……何だこいつら…」



窓に何かがいる。私がサンジさんを呼ぶと私の視線を追うように同じものに目が留まった。サングラスをした大きな鳥と、同じくサングラスをしたなんか丸っこい(ちょっと可愛い)動物。一瞬シーンとした空気が流れる。が、すぐにソレは戦闘態勢。



「うわっ!!!………むーちゃん!!」

「だ、大丈夫…!……じゃ、ない、かもしれない……」



一瞬のことでよく理解は出来なかった。だけど背中からマシンガンのように危ないものを出してくる鳥の攻撃に身動きが取れなくなっていた。すると横からまるっこいのが貝殻…刃物がついてる貝殻を持って私に向ってきた。危ない!と避けようとしたがもう目の前、だめだ避けられない。



「女性に手を出すたァいくら動物ったって許せねェぜ……こンのメガネざるがっ!!!」



間一髪、サンジさんが見事な蹴りでそれを吹っ飛ばしてくれた。しかし今度は鳥。また背中から何か出し私の方を向いている。



「だからてめェは…やめろってんだよ…巨大ニワトリ」



だけどまた助けてくれる。今度は鳥の首をグギッと、反転させた。どさりと落ちたそれは見るに耐えないくらい、可愛そうな見た目。動物愛護団体なんかが見たらもう…なんて思いながらそんな可哀想な鳥から目を逸らした。
電話が終わったらしくサンジさんはその電伝虫を元に戻し、私の方を見た。そしてゆっくり歩いてきて、同じ高さにしゃがみ込んだ。



「守るって言ったのになァ…」



伸びてきた大きな手はそっと私の右頬に触れた。正面で少し淋しそうな表情を浮かべた彼の指には血がついている。…あのまるっこいのにやられたやつだ、きっと。
ポケットからハンカチを出し私の頬を拭いてくれた。



「……大丈夫ですよ」

「いやァ、女性に傷を許すなんて、俺としたことが…」

「大丈夫、私ちゃんとサンジさんに守ってもらったよ、……だって怖くなかったもん」



一瞬なにかを考えるように口を開いた。だけど言葉は出てこなくて、でもすぐにニッと笑って「そうか」と口にした。直ぐに血が止まったようでサンジさんは大丈夫?って声をかけてくれて、座り込んでいた私に手を差し伸べてくれてゆっくり立ち上がった。


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