「ナーミさ〜ん!ビービちゃーん!」



サンジさんがハートを撒き散らしながらそう叫ぶ。ここは本当に、まるでジャングルのよう。しっかり着いていかないとすぐにでも迷子になりそうだった。
しばらくそうやって歩いているがやはり2人は見付からない。奥へ奥へと足をすすめていくと、迫力満点で凄く恐ろしい鳴き声が聞こえてきた。ビクッとする私に気付き、一歩前に出てくれる。目の前に現れたドデカイ獣に足が竦んでいだ。



「大丈夫大丈夫」



グルルル…と明らかな威嚇で私たちに向ってくるソレはまるで虎のような、でもそんな柄なんてないからタテガミのないライオンのような。メスのライオンにはタテガミ無いんだっけ、なんて事を思い出しなから私は一歩引き下がる。



「……え、」

「むーちゃんのいた世界じゃこんな事出来なかったんじゃねーか?心配しなくても襲われたりしねェよ。まぁそんときゃ俺が守ってやるが」

「………あ、りがとう、」



獣相手にまるで秒殺。耳を垂らし怯え切った瞳のソレの背中に乗ったサンジさんに促されるように私も恐る恐る乗り込んだ。後ろにいる彼が時々よろめく私に申し訳程度に手を添えてくれたりする。
何だか不思議な気分。生き物の背中に乗るなんてラクダですら経験がないのに、森の王者みたいな存在に跨るなんて。流れる景色はひたすら緑の草木で、綺麗な空気に流れる風が凄く気持ちいい。



「…いないね」

「いないなぁ…ん?……なんだこりゃ」



サンジさんの動きが止まり、私たちの前に真っ白な怪しい建物が現れる。虎?の背中から降りてその建物に近付くと更に不気味で怪しい。進むのを躊躇う私に大丈夫だと呟きサンジさんは扉を開ける。
一人じゃない。サンジさんがいる。そう心に思い直し、彼の後を着いて私も中に入った。
真っ白な部屋の中は外と同じように真っ白だった。真ん中にはチェックの布が敷かれた机があり、そしてソファーのような椅子もある。机にはお洒落なティーカップなんかも置いてある。



「おかしな場所だな…まぁ取り敢えず紅茶でも飲むか」

「え、あの、」

「んー?…これァなかなか上質な葉を使ってるようだな」



薫りを嗅いで満足そうにそう呟いた。ドカッと椅子に座ったサンジさんと同じように私も座る。彼が何もしないなら私にも何も出来ないからごく自然な流れ。差し出してくれた紅茶は凄く美味しかった。ストレートティーが苦手な私の為にミルクティーにしてくれているけれど、ペットボトルなんかでよく飲んだそれとは比べ物にならないくらい美味しいと感じた。


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -