事が落ち着くと、前に薄ら、ボヤッとした島が見えてくる。あれが二つ目の島らしい。が、さっきの島とは全く違う。まるでジャングルのような、何だか薄暗くて薄気味悪い。



「ここが“リトルガーデン”……………!!」

「―そんなかわいらしい名前の土地には見えねェぜ?」

「どの辺がリトルなんだ………!?」



怖いのは私だけじゃない、らしい。皆も怖いものってあるんだなぁと思うと何だか、やっぱり普通の人なんだって親近感が湧いてくる。みんな強い、だからこんな普通の事が驚きだったりするのだ。
だけどそんな事に浸っている場合なんかじゃない。ギャアギャア、やらドオン、やらと聞こえてくる物騒な物音に私の心臓は縮こまる。しまいには虎さえも血を流して倒れてしまった。



「普通じゃないわっ!!絶対普通じゃない!!!何で“密林の王者”の虎が血まみれで倒れるの!!?」

「こ…この島には上陸しないことに決定っ!!」



ナミとウソップの意見には大賛成だった。だって、素直に言ってしまうと、怖すぎる。虎でさえも怖いというのに、それさえ倒れてしまうようなそれ以上の恐怖が待っているなんて。しかもジャングル、怖すぎる要素は全て揃っていた。



「冒険のにおいがするっ!!!」



いつも通りにルフィの、空気を読まない発言が船に響いていた。ビビさんも行くと言い出し、お弁当を持って鳥と3人で出ていった。ちなみに鳥の名前は“カルー”と言うらしい。鳥らしからぬ表情の豊かさや行動がなんだか凄く可愛らしいと思った。
そしてゾロさんとサンジさんも狩りの勝負だと出ていく。残されたのはウソップとナミと私。3人並んで三角座り。ナミはこの島のことを知っているような気がする、と必死で何かを思い出している。



「むーちょっと、手伝ってくれる?」

「…あ、うん、」

「最近読んだ気がするの…」



ナミに呼ばれて私も部屋に入り、ガサガサと本棚を漁る。私にはよく分からなかったけれど、本をペラペラと捲っていく。英語のようなものから私が読めるようなものまで色んな本があった。
床に落ちた本を拾って、私が何を手伝えばいいのか考えてると、持っていた本を見て「それだ!」と叫んだ。ナミに本を渡すとペラペラと捲り始め、あるページでピタッと目が止まる。そして顔がみるみる青ざめている。大変だ、と呟くとナミはバタンと外に出ていく。
私は散らかった本を片付ける。



「いやああああああっ!!!!」

「ギャあああああ!!!」



すると外から聞こえてきたウソップとナミの叫び声に、肩が跳ねて思わず持っていた本を落としてしまった。目を向けた方に現れたものに、私の動きはぴたっと止まってしまう。色んな不思議な物を見てきたけれど、久々にまた、こんな驚きに襲われていた。
なんて大きな、大きな人、なんだろうか。何なら島の森林や山をも越えてしまうような大きさの、人が、立っていた。
どうしようとグルグル回る頭。だけれど答えが見つからない。大きな声が聞こえてくるけれど、混乱した頭には入ってこない。どうしようどうしよう、そればっかり。見つかるのが怖くてひっそりと息を潜める。すると聞こえなくなる声。



「………う、そ……」



落ち着いたと思い外に出ると、そこには巨人はおろか、ナミもウソップもいなくなっていた。混乱した頭が更にぐちゃぐちゃになり、理解した頃には絶望と恐怖だけがここに残されていた。


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