辿り着いた先には通路がまっすぐに伸びている。…どうなっているんだろうか、クジラの背中に扉があって、きちんと通路が整備されているだなんて。さすがのルフィも驚きは隠せないでいるようだった。



「大丈夫だ心配すンな!!!」



不安でぎゅっと握ったルフィの手に、彼は凛々しい表情でそう声をかけてくれる。なんだか不思議だった。大丈夫だと言われると、本当に大丈夫なような気がするんだ。
ゆっくり歩いていくと、突然また身体が揺れる。いや、違う今度はそんな生ぬるいものじゃない、身体が、飛ばされる。私もルフィも突然の事に何かを掴む事さえできずに、身体を壁に、木に、いろんなところにぶつけていた。痛い、すごく痛い、だけど繋がれた手だけは離れる事はなかった。



「なぬっ!!行き止まりかーっ!!?」



今度は正面からぶつかる、そうやって目を瞑るとガンッという鈍い音がした。だけど身体に走る痛みはほとんどない。ぐえっ、と落ちたルフィがまた、私を庇ってくれていたのだ。



「…今度は何だ?海が?川か?水路みてェだななんか」

「……ど、どうなってるの、?」

「わかんね、ッ…うわっ」



まただ。今度は立ち上がったルフィが走りだす。傾きも加わったその速さに私がついていけるはずもなく、靴に引っ掛かりグラつく身体。だけどまたルフィが助けてくれる。うわああああっていうルフィの叫び声が、私の耳元に大きく聞こえている。こわい、どうなるの、って泣きそうになりながら私は思いっきりルフィにしがみついた。



「ル…ルフィ…むーも!?」

「よォ!!みんな無事だったのか!」



ああまた身体が浮いてる。空を飛ぶってこんな気持ちなのかな、そう考えながらもギュッと固く閉じられた目を開けることはできなかった。
開けなくてよかったのかもしれないけれど。落ちた先は固くも何ともない、だけれどほんのちょっと痛い海の中だった。驚いて目を開ける、ルフィの身体から力が抜けていくのがわかる。泳げないのだろうか、苦しそうに頬っぺたに息をいっぱい溜めて必死な顔のルフィがいた。
泳ぎは得意じゃない。だけど泳げないわけでもない。私はルフィの身体を掴んで光の差す方へ向かって必死で泳いだ。



「っぷ、はァっ!!!」

「…はぁ、っ」

「た、助かったむー…!」



船はすぐ傍にあるのに、あんな高さじゃどうすることも出来ない。とりあえずルフィの顔を水に付けないように、細い体を離さないようにするのに精一杯だった。



「ったく…」

「…あ、ありがとう、」

「しっかり掴まっとけ」



ゾロさんが飛び込んできてくれて、ルフィごと私を抱え込む。そしてそのまま船に飛び乗った。…どんな運動神経してるんだろう、一体どうやったらこんな高い所まで登れるのだろうか。



「お、おい…!」

「むー、!!!?」



船に足を乗せ、ゾロさんが私から手を離すと同時に身体が崩れていくのがわかる。目の前が真っ暗。こんなときに貧血起こすなんて、馬鹿だ、私。
そのまま頭まで真っ暗。みんなが私を呼ぶ声が、ずっとずっと遠くに聞こえた。


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