樽を片付けてルフィとナミ以外のみんなは船の中に入る。タオルで濡れた髪の毛や身体を拭いた。置きっぱなしだった服や靴も、嵐のせいでびしょびしょになってる。乾かさなきゃ着れないなぁと、部屋の隅に置いておいた。



「ずっと気になってたんだがよ」

「どうしたサンジ」

「むーちゃんは一体何モンなんだ?」

「…どーいう質問だ」

「いや…最初の戦いの時から違和感はあったんだ。震えたまま隠れて、あそこまで戦いを怖がるお嬢さんが海賊船に乗ってるなんて不自然すぎる。むーちゃんがオカシイって言ってるわけじゃねーぜ?」

「あー…サンジは知らねェのか。………いや、そういえば俺らもよく知らねェな」



ウソップがどうやって説明しようかと考えてくれている。ゾロさんも上を向いたりして、言葉を探してくれているのだろう。
私がこの船に来たのはサンジさんが来る前だった。だからサンジさんは知らなくて当然。みんなにも、ちゃんと話してなかったんだったっけ。



「…私、知らない間にこの船にいたの」

「……知らない間に?」

「俺らがこの船もらった時から、むーはこの船の中にいたんだ」

「…サッパリだぜ」



タバコを蒸かしながら頭にいくつもハテナが浮かんでいる。



「私は、ここの世界の人間じゃない。海賊なんて見たことなかったし…もっと平和な世界で生まれ育って、だけど気付いたらここに来てて…」

「…意味がわからん」

「俺もよくはわかんねェが…要するにこいつが生まれ育った世界に海賊ってのは存在しなかったんだろ。海賊がはびこってるような今いるこの世界と、こいつの生まれ育った世界は違う」

「…よくわかんないけど、宇宙人みたいな感じなのかな」

「いや宇宙人て…」



ウソップの小さな突っ込みもみんなスルー。説明するには少し難しいのかもしれない。どう話そうかと考えてみる。話してわからないなら、描いてみればいいのかな、なんて思って紙を机に置き、ペンを握った。
私がその紙に書いたのは私が住んでいた地球の世界地図。詳しくはわからないからアバウトな地図にはなったけど、世界地図には違いない。3人は興味津々に私の描いた地図を見つめている。



「何だ?この変な図は」

「私がいた場所の世界地図だよ」

「世界地図?これが?東の海も西の海も…俺らの故郷の島もねェ」

「お前はどこにいたんだ?」

「ここだよ。日本っていう、小さな島国。1億3000万人くらいの人が住んでて…」

「1億3000万人!?こんな小ッせぇ島にそんなに人がいンのか!!?」



知っている限りの知識を並べる。もっとちゃんと勉強しておけばよかったなぁって思うけど今更どうしようもない。みんなは私の話に興味津々らしく、地図を見ながら色んな質問をしてきた。
やっぱりここの世界と、私のいた世界は何もかもが違うらしい。



「成る程…異世界人ってわけか」

「でもすげーな、そんなに技術が進歩してるなんて」

「そんなに昔から剣士がいるとはな。なかなか興味深い世界だ」



ゾロさんはかなり日本の歴史に興味を持ってくれているらしく、次々と質問を投げ掛けてきた。詳しくは知らないけれど、知っている話を並べるだけで喜んでくれる。刀と刀のぶつかり合い、どうやらそれが気に入ったらしい。



「だったら尚更、だ。むーちゃんは俺らが死ぬ気で守らねェと」

「ったりめェだろ」

「心配すんな俺らがついてる!」



心強い一言だった。ここ数日間の間で、どれだけ皆に救われているだろう。きっともう、思い出せないくらい何度も何度も助けられている。
「彼らがいるから大丈夫」だと、今ならそうやって自信を持って言える気がした。


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